長野の山あいに、ひっそりとたたずむ温泉地がある。 別所温泉。 上田から電車で30分、標高560mの盆地に湯けむりが漂う。 冬に来ると、空気が違う。 観光地の賑やかさじゃなく、もっと静かな何かがある。 古い寺と、熱い湯と、雪をかぶった山。 そういう場所だ。
別所温泉のおすすめスポット
北向観音|背中合わせの仏様に、手を合わせる朝
早朝7時、参道に人はほとんどいない。
石畳に薄く雪が積もっている。
足元を確かめながら歩く。
北向観音は、善光寺と「向き合う」ように北を向いて建っている。
善光寺が来世の利益を授けるなら、
ここは現世利益の寺だという。
だから両方を参れば、完全なご利益になると地元の人が教えてくれた。
境内に足を踏み入れると、温泉の湯けむりが漂ってきた。
すぐ横に温泉が湧いているのだ。
参拝と温泉が同じ空間に共存している。
これは初めての感覚だ。
愛染かつら。
樹齢1200年のケヤキが本堂の脇に立っている。
見上げると、枝が空を覆い尽くしそうなほどの広がりだ。
冬の朝、葉が落ちた枝越しに青空が見える。
その景色だけで来た甲斐があった。
安楽寺八角三重塔|森の奥に、国宝は静かに立っている
正直、舐めている。
「地方の小さなお寺の塔でしょ」。
杉木立の参道を5分ほど歩く。
拝観料300円を払って奥へ進む。
木々の隙間に、塔が見えた瞬間、足が止まった。
八角形。
日本に現存する唯一の、禅宗様式の八角塔だという。
鎌倉時代の建造。
700年以上、ここに立っている。
近づくほどに、その静けさが増す。
観光地のドヤ感がない。
ただそこにある。
それだけなのに、圧倒される。
冬の平日は参拝客が少なく、
ほぼ独り占めで眺めることができる。
カメラを向けるのも忘れて、しばらく立ち尽くしてしまった。
帰り道、住職らしき方と少し話した。
「みんなここで立ち止まっていくんですよ」と笑っている。
そりゃそうだ。
大師湯|100円で入れる湯が、いちばんよかった
別所温泉には共同浴場が3つある。
大師湯、石湯、大湯。
どれも150円か200円で入れる。
大師湯を選んだのは、名前の響きだけだ。
脱衣所は狭い。
ロッカーじゃなく、棚に服を置くだけ。
シャンプーもない。
でも湯が良かった。
無色透明、少しぬるっとした感触。
ナトリウム・カルシウム硫酸塩泉。
源泉かけ流し。
地元のおじさんが2人、のんびり話している。
湯温は43度くらい。
冬の寒空の下、温泉街を歩いてきた体に染みた。
10分も浸かると、指先まで温まる。
上がった後、外に出ると余計に寒く感じるはずなのに、
しばらく体がぽかぽかしたままだ。
高級旅館の貸切風呂より、
こういう湯の方が記憶に残る。
なぜかはわからないけど、そういうものだ。
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