北海道の山の名前は、アイヌ語が多い。 その中でも「サマッカリヌプリ」は、口に出したくなる音をしている。 標高1,061m。日高山脈の北端に近い、静かな山だ。 冬、ここに向かうとき、道はほとんど人の気配がない。 それでも来たくなる理由が、山頂に待っている。
サマッカリヌプリのおすすめスポット
サマッカリヌプリ山頂|雪原の上に、自分ひとりだけがいる
登山口に着いたのは朝7時前だ。
気温はマイナス12度。
息を吸うと、鼻の奥がピリッとする。
冬季の入山者はほぼいない。
トレースがない。
自分でルートを踏み固めながら登る、あの感覚。
樹林帯を抜けると、視界が一気に開く。
日高の山並みが、左から右まで全部見える。
雪がまだ風に飛ばされていて、稜線が白く煙っている。
「来た」。
それしか言葉が出ない。
山頂標識は雪に埋まっていて、てっぺんだけ顔を出している。
写真を撮ろうとしたら、手袋を外した5秒で指が痛くなった。
冬山の洗礼を、きっちり受けた。
下山は2時間。登りの自分の足跡だけが、雪の上に残っている。
登山口周辺の林道|誰も踏んでいない雪の上を歩く
林道に入った瞬間、音が消えた。
本当に、静かになった。
風もない朝だったせいか、自分の呼吸音と、雪を踏む音だけが聞こえる。
スノーシューを履いていても、たまに膝まで沈む。
木の枝に雪が積もって、重さで垂れ下がっている。
白い回廊みたいになっていて、思わず立ち止まった。
写真に収めようとしたが、あの光の感じは画面に入らない。
こういう景色は、現地にいる人間だけのものだ。
林道の距離は片道約4km。
歩くと1時間半ほどかかる。
途中に休める場所はない。
水と行動食は多めに持ったほうがいい。
冬の林道は夕方から急に暗くなる。
14時には戻り始めることを決めている。
その判断は正解だ。
日高町の温泉|凍えた体に、お湯が染みる夜
下山後、体の芯まで冷えている。
指先の感覚が戻るのに、車のヒーターで20分かかった。
向かったのは、日高町内の温泉施設。
入浴料は600円だ。
脱衣所で服を脱いだら、寒さで鳥肌が立った。
そのまま湯船に入ったら、痛いくらいの熱さを感じた。
冷えた体に温泉が入ってくる、あの感覚。
冬山の後にしか味わえない。
湯上がりに、地元の人が食堂でそばを食べている。
つられて注文した。
650円。
シンプルで、おいしかった。
窓の外はもう暗くなっていて、雪がちらついている。
明日また山に入ろうか、と思いながら食べている。
そういう気持ちになれる山だ、サマッカリヌプリは。
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サマッカリヌプリへの行き方
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