北海道の奥地に、ひっそりと存在する山がある。 ピシカチナイ山。 名前を聞いただけでは、どこにあるのかもわからない。 でも、冬にここへ来た人は、たいてい言葉を失う。 雪原が広がって、空が低くて、風だけが動いている。 そういう場所だ。
ピシカチナイ山のおすすめスポット
ピシカチナイ山 登山口|静寂の始まり、ここから別世界に入る
登山口に着いたのは、朝7時ごろだ。
気温はマイナス12度。
車から出た瞬間、空気が刺さるように冷たかった。
駐車スペースは数台分しかない。
案内板もシンプル。
整備された観光地とは、全然ちがう雰囲気がある。
アイゼンを装着する。
手袋を二重にする。
準備に10分かかった。
そこから先は、踏み跡をたどる旅になった。
先行者のトレースが1本だけ、雪の斜面を伸びている。
それだけで、少し安心した。
樹林帯に入ると、風がぴたりと止む。
エゾマツと思われる木々が、雪をたっぷり抱えて立っている。
静かすぎて、自分の息の音が聞こえる。
そういう静けさだ。
山頂直下の雪原|視界が開けた瞬間、声が出た
樹林帯を抜けるのに、約1時間半かかった。
そこから傾斜がきつくなる。
ズボズボと足が沈む区間もあった。
スノーシューがあれば、もう少し楽だ。
山頂手前の稜線に出た瞬間、景色が一変した。
木が消えた。
空が広がった。
360度、白い世界だ。
大雪山系の稜線が、遠くに連なっている。
雲一つない青空との境界線が、くっきりしすぎていて、
少しだけ現実感がない。
風は強い。
じっとしていると、3分で指先の感覚がなくなった。
それでも足が動かない。
標高はそれほど高くない。
1000メートルに届かない山だ。
でも、冬のこの眺めは、登らないと絶対に見られない。
そういう景色だ。
下山後の温泉|体が溶けていくような1時間だ
下山は、登りより時間がかかった。
雪が緩んできて、ズルズルと滑った。
2回ほど尻もちをついた。
それも含めて、冬山の話になる。
麓まで戻ったのは、14時過ぎ。
全身が重かった。
向かったのは、南富良野方面の温泉施設。
かなやま湖畔まで車で30分ほど走った。
入浴料は600円台だ。
脱衣所に誰もいない。
湯船に浸かった瞬間、声が出た。
じんわりと、爪先から熱が戻ってくる感覚がある。
窓の外に、雪景色。
山で凍えた後に入る温泉は、日常の温泉とは別物だ。
そのギャップのために、冬山に来ているだ。
そう思うくらい、気持ちよかった。
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ピシカチナイ山への行き方
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