標高1,032m。 そんなに高くない。 でも、冬のピセナイ山は別格だ。 道南・今金町の奥に静かに存在するこの山は、観光客がどっと押し寄せるような場所じゃない。 だからこそ、雪の斜面に自分の足跡だけが残る瞬間がある。 誰かに教えたいような、教えたくないような、そんな山だ。
ピセナイ山のおすすめスポット
ピセナイ山登山口|静寂の入口に立つと、覚悟が決まる
朝7時、登山口に着いた。
車は1台も停まっていない。
積雪は膝下くらい。
トレースなんてない。
自分でルートを踏みながら進むしかない。
これが怖いんだけど、気持ちいい。
新雪を踏む音だけが聞こえる。
風もない。
登山口から山頂まで、コースタイムは約2時間30分。
冬は雪のせいで30〜40分は余計にかかる。
軽アイゼンだと途中で滑る箇所がある。
10〜12本爪のアイゼンを持っていって正解だ。
スタートしてすぐ、樹林帯に入る。
エゾマツ、トドマツが雪をまとって並んでいる。
日が差し込んで、木の影が雪面に落ちる。
その光景を見た瞬間、「ああ、来てよかった」。
誰かに話しかけたくて、でも誰もいない。
その孤独が、妙に心地よかった。
山頂稜線|360度の白。言葉が出ない
稜線に出た瞬間、視界が一気に開けた。
積丹半島の方角に日本海。
狩場山、遊楽部岳、羊蹄山。
ぐるりと見渡すと、白い山々が続いている。
気温はマイナス8度くらい。
風が出てきて、頬が痛い。
でも離れたくない。
山頂標識の前に立った。
標高1,032m。
標識だけが静かに立っている。
シャッターを押す手が震えた。
寒さだけじゃない。
山頂滞在は15分が限界だ。
風が強くなってきたのと、体が冷えてきたのと。
下山は登りのトレースをたどる。
それだけで、かなり楽だ。
往復4〜5時間。
体力的にはそこまでキツくない。
でも冬山の基本装備は必須。
それを忘れると、この山は牙を剥く。
今金町の温泉・ピリカ温泉|下山後、体の芯から溶けていく
下山してすぐ向かったのがピリカ温泉。
登山口から車で約30分。
ここが最高だ。
冷えた体で湯船に入った瞬間、声が出た。
「あ゛〜」って感じの声。
恥ずかしかったけど、周りも同じだ。
泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物泉。
ぬるっとした感触がある。
体が芯から温まる。
登山の疲れがほどけていく感覚がする。
入浴料は500円。
安い。
露天風呂もある。
雪景色を見ながら入れる露天は、冬ならではの贅沢だ。
食堂もある。
ラーメンと定食が中心。
地元のおじさんたちがのんびり食事している。
こういう場所に来ると、旅してる実感がある。
山に登って、温泉に入って、帰る。
それだけなんだけど、十分すぎた。
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ピセナイ山への行き方
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