北海道の内陸部、名寄市の山あいに、ひっそりと湯が湧いている。 ピンネシリ温泉。 観光地図にもほとんど載らない。 でも知っている人は、何度でも来る。 そういう場所だ。 雪に閉ざされた冬の静けさと、体の奥まで染みる湯。 ここにしかない時間がある。
ピンネシリ温泉のおすすめスポット
ピンネシリ温泉 ゆったり館|雪の中に、褐色の湯が待っている
名寄市街から車で約20分。
道は細くなり、雪壁が両側に迫ってくる。
本当にこの先に温泉があるのか、少し不安になった。
たどり着いたのは、木造の小さな建物。
派手な看板もない。
でも駐車場にはそこそこ車が止まっている。
地元の人に愛されている、その空気が伝わってきた。
入浴料は大人500円。
脱衣所は古びているけれど、清潔だ。
湯船に足を入れた瞬間、驚いた。
色が濃い。
薄い紅茶みたいな褐色で、底が見えない。
ナトリウム塩化物泉で、なめるとしょっぱい。
窓の外は一面の雪景色。
湯気と雪が混ざって、景色がぼやける。
誰も話さない。
みんなただ、湯に浸かっている。
30分入っていたら、体の芯からほぐれた。
冬にここに来た理由が、ようやくわかった気がした。
ピンネシリ岳の冬景色|白すぎて、目が痛い
温泉の名前の由来になった、ピンネシリ岳。
アイヌ語で「男の山」という意味だと、地元のおじさんに教えてもらった。
冬の山は登れない。
でも麓から見上げるだけで十分だ。
晴れた日の白さが、異常だ。
空の青と、雪の白。
それだけしか色がない。
温泉の駐車場に立って、ただ山を見ている。
5分くらいそうしている。
誰かに話しかけられるでもなく、写真を撮るわけでもなく。
こういう時間を、旅と呼んでいいと思っている。
気温はマイナス12度だ。
鼻の奥が痛い。
でも体は温泉のおかげでポカポカしている。
その差がおもしろかった。
名寄市街の食堂|帰り道に、味噌ラーメンを食べた
温泉から名寄の市街地へ戻る途中、腹が鳴った。
16時を過ぎていたのに、そういえば昼を食べていない。
地元の人に聞いたら、「駅前の食堂に行けばいい」と言われた。
名前も覚えていない小さな店に入った。
カウンター8席。
厨房のおじさんが一人でやっている。
味噌ラーメンを頼んだ。
800円だ。
スープが濃い。
北海道の味噌は本当に濃い。
チャーシューが厚くて、コーンが山盛りで、バターが溶けていく。
体が温まっていても、またじんわりと温かくなった。
おじさんは何も話しかけてこない。
それもよかった。
旅先で、誰とも話さない1時間がある。
ピンネシリの帰り道は、そういう時間だ。
モデルコース
ピンネシリ温泉への行き方
HUB CITY
札幌(拠点都市)から行ける旅先を見る →