稜線に出た瞬間、息が止まった。 風が顔を叩いて、雪が光る。 北戸蔦別岳は、北海道・日高山脈の奥地にある。 アクセスも長く、楽な道でもない。 それでも、来てしまう山がある。 ここはそういう山だ。
北戸蔦別岳のおすすめスポット
北戸蔦別岳|稜線に立つと、日高の全部が見える
登山口は二岐沢。
林道を歩くところから始まる。
そこからさらに急登が続く。
標高差はざっと1,400m超。
甘く見ると、足がやられる。
冬季に入ると、雪の量が別次元になる。
ラッセルで腰まで埋まることもある。
1月に突入した日、気温はマイナス18度だ。
防寒装備を妥協したら、命取りになる。
稜線まで出ると、景色が一変した。
幌尻岳が正面にどかんと座っている。
右を向けば、戸蔦別岳の稜線が続く。
雲一つなかった日、その白さがまぶしかった。
ここまで来た意味が、体でわかった。
言葉より先に、震えが来た。
幌尻山荘周辺|雪の中の静けさは、別の時間が流れている
冬の幌尻山荘は、無人になる。
小屋の外に出ると、音がない。
風の音だけが、低く鳴っている。
夏に来たことがある人は知っている。
あの渡渉の緊張感を。
冬は川が凍る。
別の顔を見せる場所だ。
幕営でここに泊まった夜、星が出た。
-15度の中でシュラフに潜り込んで、
外に出る気力もなかったけれど、
テントのベンチレーターから星が見える。
それだけで、十分すぎた。
朝4時に起きて、ヘッドランプをつけた。
雪面にクラストが入っていて、アイゼンが気持ちよく刺さった。
あの感触は、忘れない。
北戸蔦別岳山頂直下|風が教えてくれる、ここの本気
山頂まであと200mというところで、風が変わった。
急に強くなって、体が押し戻された。
立っているだけで消耗する。
日高の稜線は、逃げ場がない。
樹林帯を抜けたら、もう風をさえぎるものがない。
ピッケルを雪面に突き刺して、一歩ずつ進んだ。
山頂標識は、雪に埋まっている。
掘り出したら、半分くらい出てきた。
記念写真を撮る余裕はない。
手袋を外せる気温じゃない。
でも、見える。
幌尻、戸蔦別、ピパイロ。
日高の主稜が、全部つながって見える。
これを見たくて来た。
正確にはこれを見るまで、その理由がわかっていない。
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北戸蔦別岳への行き方
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