稜線の向こうに、誰もいない白い世界が広がっている。 十勝幌尻岳、標高1846m。 北海道の冬山をなめてはいけないと、 足首まで埋まる雪を踏みしめながら思った。 それでも、あの頂から見た十勝平野の広さは、 言葉にするのが野暮に感じるくらいだ。
十勝幌尻岳のおすすめスポット
十勝幌尻岳 登山口|夜明け前、静寂の中にスタートラインがある
冬季は林道ゲートが閉まる。
そこから先は自分の足だけが頼りだ。
登山口まで徒歩でおよそ2時間。
気温はマイナス15度を下回ることもある。
ヘッドライトの灯りで雪面を照らしながら歩く時間が、妙に好きだ。
人の声がしない。
風の音だけがある。
夏とはまったく違う顔をしている山だと気づくのは、たいていここだ。
アイゼンは10本爪以上を推奨する。
スノーシューを持ち込む人も多い。
出発は遅くとも朝5時には林道ゲートに着いておきたい。
日没が早い冬の北海道では、時間の余裕が命綱になる。
十勝幌尻岳 山頂|風に削られた雪面と、果てしない平野が待っている
山頂に立ったのは、出発から約6時間後だ。
視界が一気に開けた瞬間、言葉を失った。
十勝平野が地平線まで続いている。
あれほど広い平地を、山の上から見たことがない。
風は強い。体感温度はマイナス20度を超えている。
それでも足が動かなくなるのは、寒さではなく景色のせいだ。
雪庇に近づきすぎてはいけない。
この山で毎年のように事故が起きている。
踏み跡がない日は、どこが崖の端かわからない。
山頂の標識は雪に半分以上埋まっている。
それが冬の幌尻の正直な姿だ。
十勝幌尻岳 稜線歩き|誰も歩いていないトレースが、一番美しい道だ
山頂手前の稜線がいちばん好きだ。
左右が切れ落ちているのに、足元の雪だけが光っている。
誰も歩いていないトレース。
前日に降ったばかりの新雪が、斜面をフラットに覆っている。
歩くたびに「ザフッ」という音がする。
その音を聞くために来ただとさえ思った。
稜線上では風速15m以上になることもある。
バラクラバとゴーグルは外せない。
ダウンの上にハードシェルを着ていても、30分も経つと体の芯が冷えてくる。
行動食は凍らないものを選ぶ。
チョコレートはカチカチになる。
おにぎりは胸ポケットで温めながら食べた。
苦労の分だけ、景色が深く刺さる山だ。
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十勝幌尻岳への行き方
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