道路が雪で消える。 標識も、民家も、ほとんど何もない。 そんな場所に、湯けむりだけが立ち上がっている。 千走川温泉は、北海道の積丹半島の付け根あたり、せたな町に静かに存在する。 「温泉地」というより、「湯がある場所」と言ったほうが正確だ。 そこに行くこと自体が、もう旅になっている。
千走川温泉のおすすめスポット
千走川温泉旅館|雪の奥に、一軒だけ灯りがある
国道から細い道に入る。
除雪はされているが、心細くなる。
本当にここでいいのか、と思い始めたころに見えてくる。
一軒の建物。
煙突から湯気。
駐車場に車は数台だけ。
ここが千走川温泉旅館だ。
日帰り入浴は500円。
営業は午後1時から6時ごろまでだが、事前確認が必須だ。
脱衣所はこぢんまりしている。
ロッカーではなく、カゴと棚。
それでいい、という気持ちになる。
湯船に入った瞬間、声が出た。
ぬるっとした感触。
ナトリウム塩化物泉で、肌にまとわりつくような柔らかさがある。
温度は40度前後。
長く入っていられる。
窓の外は雪の斜面だ。
だれも話さない。
湯の音だけが続く。
20分くらい、そのまま動けない。
千走川沿いの冬道|音が、なくなる場所
温泉の前を流れるのが千走川だ。
冬は岸に雪と氷が張り付いて、川の色が深くなる。
宿の前から少し歩いてみた。
たった10分のことだ。
でも、その10分で何かが変わる。
風がない日だ。
雪が積もった木の枝。
川の流れる音だけ。
それ以外、本当に何も聞こえない。
都市の生活では体験できない「無音」がある。
イヤホンを外して、立ち止まった。
頭の中がゆっくり静かになっていく感覚がある。
15分も歩けば体が冷える。
でも、それでいい。
温泉に戻ればいいだけだ。
雪道は滑るので、防水のトレッキングシューズが必要だ。
スニーカーで来たら後悔する。
実際、駐車場で一度滑った。
せたな町の食と夜|帰り道に寄る、小さな満足
温泉を出ると、夕方5時前だ。
外はもう暗くなりかけている。
北海道の冬の日没は早い。
せたな町の中心部まで車で20分ほど走る。
食堂やスーパーが数軒ある程度の規模だ。
地元のスーパーに入った。
たこが安かった。
せたな町はたこの漁獲で知られている。
刺身パックが600円台。
迷わず買った。
宿に戻って食べたたこは、歯ごたえが違った。
スーパーのものでこの味なら。
夜の温泉街という概念は、ここにはない。
灯りは少ない。
コンビニまで車で30分かかる。
でも、それを不便と感じない。
何もないから、することがない。
だから、ゆっくり眠れる。
翌朝、久しぶりに6時間以上熟睡した。
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千走川温泉への行き方
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