道路が終わる場所に、湯がある。 案内板もほとんどない。 ナビが「目的地周辺です」と言い出した頃、もう舗装が消えかけている。 川北温泉は、そういう場所だ。 辿り着いた者だけが入れる、秘湯中の秘湯。 冬はさらに条件が厳しくなる。 それでも、行く価値がある。
川北温泉のおすすめスポット
川北温泉|林道の果て、誰も教えてくれなかった湯
林道を30分以上走った。
砂利道で車がガタガタ揺れた。
「本当にここか?」と何度も思った。
到着したのは、木造の小屋だ。
料金は寸志。
つまり、気持ちを置いていく。
脱衣所は簡素そのもの。
ロッカーなんてない。
荷物は棚に置くだけ。
湯船は露天が一つ。
川沿いに張り出すように作られている。
緑がかった透明な湯が、静かに満ちている。
温度は高め、45度近くある。
すぐには入れない。
じわじわ慣らしながら、やっと肩まで沈む。
川の音しか聞こえない。
風が杉の梢を揺らす。
誰も喋らない。
「温泉に来た」じゃなくて、
「自然の中に、湯があった」という感覚。
ここはそういう場所だ。
上川町の街歩き|温泉の前に、ここで腹を作る
川北温泉に向かう前、上川町の市街地に寄った。
人口は約3,500人。
メインストリートは10分も歩けば端まで行く。
目に止まったのは、地元の食堂。
11時半には地元の人で席が埋まっている。
醤油ラーメンを頼んだ。
680円だ。
派手さはゼロ。
でも、スープが真っ当に旨かった。
北海道の出汁の引き方は、やっぱり本州と違う。
食後は小さな商店を覗いた。
地元産の山菜の瓶詰めが並んでいた。
フキ、ウド、タラの芽。
季節によって棚の顔が変わるらしい。
街の空気はゆっくりしている。
急ぐ人がいない。
声が小さい。
静かな町だ。
林道に入る前に、ここでトイレも済ませておくべきだ。
川北温泉周辺には何もない。
それだけは覚えておいてほしい。
冬の林道|雪の中で、静寂が本物になる
冬に川北温泉を目指すなら、覚悟がいる。
林道は除雪されていないことが多い。
4WDでも、深雪の日は引き返すべきだ。
運良く、行けた日があった。
12月の上旬、前日に雪が降った翌朝。
轍がない。
誰も入っていない林道を、一番乗りで進んだ。
杉と白樺が雪を纏って、静止している。
風もない。
タイヤが雪を踏む音だけが響いた。
露天風呂に浸かりながら、雪を見ている。
湯気が上がって、視界がぼやけた。
川は凍りかけている。
寒くて、熱くて、静かだ。
あの感覚は言葉にならない。
ただ、撤収は素早くした方がいい。
濡れた髪が瞬時に凍る。
マイナス10度の世界は、情緒に浸らせてくれない。
それも含めて、冬の川北温泉だ。
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