零下20度の稜線に立つと、風が顔を刺す。 痛いくらいがちょうどいい。 支湧別岳は、北海道の冬山の中でも特別な場所だ。 オホーツク側の山並みが一望できる頂上は、静かで、広くて、ただただ白い。 観光客がいない。案内板もほぼない。 それでも、ここに来る理由がある。
支湧別岳のおすすめスポット
支湧別岳登山口|除雪された林道の先に、もう観光地の空気はない
登山口に着いたのは午前7時前だ。
気温はマイナス15度。
車から出た瞬間、鼻の中が凍る感覚がする。
林道は除雪されているが、朝一番は圧雪で硬い。
チェーンスパイクではなく、6本爪以上のアイゼンを持ってきてよかった。
周囲に誰もいない。
登山届のポストだけが、ぽつんと立っている。
ここから先は完全に自己責任の世界だ。
雪に埋まった標識を探しながら進む。
トレースが残っているときは助かる。
でも前日に雪が降ると、すべてリセットされる。
そういう山だ。
途中の急斜面でふと振り返ると、湧別の市街地が霞んで見える。
あの低地と、この標高差。
歩いてきた事実が、じわじわと体に染みてくる。
支湧別岳山頂(1,287m)|白と青だけの世界で、言葉が出ない
登り始めて約4時間。
樹林帯を抜けると、突然視界が開ける。
その瞬間が、全部を忘れさせる。
オホーツク海の水平線が薄く見える。
サロマ湖の輪郭も確認できる。
天気が良ければ知床の山並みも見えるという話は本当だ。
頂上に立っても、誰もいない。
トレースもここで終わっている。
つまり今日、ここに来たのはたぶん自分だけだ。
風は強い。体感温度はマイナス25度を下回っている。
でも動きたくない。
この景色を目に焼き付けたい。
5分が限界だ。
それ以上いると体が危ない。
シャッターを2枚切って、下山を始めた。
下りは速い。
雪が柔らかくなった昼前に、尻セードで一気に降りた区間がある。
そこだけで、往路の苦労を全部取り返した気分になった。
遠軽町・湧別周辺の宿|冷え切った体を、温泉がゆっくり溶かしてくれる
下山後の体は、芯から冷えている。
指先の感覚が戻るのに30分かかった。
近くに温泉がある。
それだけで、この山の難易度が少し下がる気がした。
遠軽町や湧別町には小さな温泉施設がいくつかある。
日帰り入浴は500円前後のところが多い。
地元の人と同じ湯船に浸かる。
誰も話しかけてこない。
それがちょうどいい。
宿は遠軽市街に数軒、ビジネスホテルや旅館がある。
繁忙期でも予約が取りやすいのが正直ありがたい。
素泊まりで5,000〜7,000円台が多かった。
夕食は地元のラーメン屋か、コンビニ。
観光地感はゼロだ。
でも、そういう夜が好きだ。
翌朝また山に向かうための、静かな前夜。
それで十分だと思えるようになったのは、いつからだろう。
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支湧別岳への行き方
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