北海道の北、枝幸郡の山あいに、ひっそりとある温泉地。 有名じゃない。アクセスも楽じゃない。 でも、だからこそ残っている静けさがある。 雪が積もった冬の朝、誰もいない露天風呂に入った。 湯気の向こうに白い木々。音は何もない。 ああ、これが目的だったと、そこで初めて気づいた。
歌登温泉のおすすめスポット
歌登温泉|誰も来ない朝の露天風呂で、時間が止まる
宿に着いたのは夕方5時過ぎ。
外はもう真っ暗で、気温はマイナス10度を下回っている。
荷物を置いてすぐ、温泉へ向かった。
内湯は無色透明の単純温泉。
ぬるっとした感触が、疲れた体に染み込んでくる。
肌がすべすべになるのは翌朝、ふと気づいた。
露天風呂は朝がいい。
夜明け前の5時半、誰もいない。
湯船のふちに雪が積もっていて、指で触ったら崩れた。
空は白みはじめていて、山の稜線がうっすら見える。
派手さは何もない。
劇的な景観があるわけでもない。
でも30分、ぼーっとしている。
何も考えない。
そういう温泉だ。
歌登の街歩き|人口500人の町に、生活がある
温泉の周辺を歩いてみた。
雪道を、長靴で、一人で。
商店は数軒。
コンビニはない。
信号も、ほぼない。
農協の直売所に立ち寄ったら、おじさんが話しかけてきた。
「どこから来たの」「東京です」「なんでわざわざ」と笑われた。
その笑いが、いやじゃない。
歌登の人口は現在500人ほど。
かつては炭鉱と農業で栄えた地だったと、宿のご主人が教えてくれた。
今は酪農が中心らしい。
夕方、牧場の横の道を歩いていたら、牛が柵越しにこっちを見ている。
目が合った。
3秒くらい、お互い動かない。
観光地じゃない場所を歩くと、こういうことがある。
それがいい。
ピッシリ山麓の雪原|白さに、飲み込まれる感覚
歌登の背後にそびえるのがピッシリ山、標高1032m。
夏は登山客も来るらしいが、冬はただの雪の山だ。
宿から車で10分ほど走ると、視界が開けた。
雪原が広がっている。
どこまでも、白かった。
音がない、というのは語弊がある。
風が木を鳴らす音がした。
自分の息の音がした。
でも人工的な音は何もない。
スノーシューのレンタルが宿にあると聞いて、試した。
料金は1時間500円。
雪の上を歩く感触は、普通の靴とは全然違う。
ふかふかしていて、体が沈む感じがした。
15分も歩くと、完全に静寂の中にいた。
振り返ると、宿の屋根だけが見える。
あとは全部、白だ。
こういう景色は、写真に収まらない。
体で感じるしかない。
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歌登温泉への行き方
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