車を降りた瞬間、硫黄の匂いが鼻をついた。 北海道・森町の山あいに、ひっそりと湯けむりが上がっている。 濁川温泉。 観光地化されていない、昔のままの温泉地。 派手な看板も、コンビニも、何もない。 あるのは、地面から湧き出す熱い湯と、冬の静寂だけ。 それが、たまらなく好きだ。
濁川温泉のおすすめスポット
濁川温泉共同浴場|100円で入れる、本物の湯がここにある
入口で100円を払う。
番台のおじさんが、ちらりとこちらを見た。
脱衣所は木造で、床が少し傾いている。
古い、いい意味で古い。
湯船に足を入れた瞬間、熱い。
43度はある。
地元のおじさんが「最近ぬるくなった」と言っていたけど、十分すぎるほど熱い。
湯の色は、名前の通り少し濁っている。
ナトリウム塩化物泉。
体の芯から温まる、重い感じの湯だ。
外は氷点下だ。
湯船から出ると、窓ガラスが白く曇っている。
誰も何も言わない。
ただ湯に浸かっている。
こういう時間が、旅の本当の贅沢だ。
観光地の温泉では、絶対に味わえない空気がある。
30分、気づいたら動けなくなっている。
濁川温泉街の湯けむり散歩|冬の朝、誰もいない道を歩く
朝7時。
宿を出ると、道路に湯気が漂っている。
至るところに源泉の噴気がある。
地面が温かいせいか、雪がところどころ溶けている。
温泉街とは言っても、旅館が数軒並ぶだけ。
歩いて10分もあれば端から端まで歩ける。
ふと足元を見ると、道の端から水が流れている。
触ってみる。温かい。
当たり前のように、熱い水が地面を流れている。
カラスが1羽、源泉の近くで羽を広げている。
暖を取っているらしい。
動物も知っている、この場所のことを。
冬の濁川は、本当に静かだ。
観光客はほぼいない。
地元の人と、湯けむりと、カラスだけ。
それでいい。
人が多い温泉地に飽き飽きしている人に、ここを教えたい。
写真を撮ることも忘れて、ただ歩いている。
新栄館|湯治宿の空気を残す、最後の一軒
濁川温泉に残る湯治宿に泊まった。
廊下が長くて、板が軋む。
部屋に鍵がない。そういう宿だ。
夕食は18時。
地元の山菜と、噴火湾のタコ。
シンプルだけど、余計なものが何もない。
夜、また風呂に入った。
貸し切り状態だ。
窓の外は真っ暗で、雪が降り始めている。
湯船の縁に頭をのせて、天井を見上げる。
木の天井が、湯気で湿っている。
何も考えない。
それが、ここに来た理由だっただ。
翌朝、チェックアウトの時に女将さんが言った。
「またおいでね、夏も静かだから」
1泊2食で約8,000円。
北海道の山奥で、この値段で、この静けさ。
もう一度来ると、その場で決めた。
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濁川温泉への行き方
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