札幌市内から車で1時間もかからない。 なのに、頂上に立つと別の星にいるみたいだ。 冬の空沼岳は、雪と静寂だけでできている。 リフトもロープウェイもない。 自分の足で踏み締めた雪の感触だけが、ここまで来た証明になる。
空沼岳のおすすめスポット
空沼岳登山口|静寂は、ここから始まる
万計沼駐車場に車を停めたのは朝7時前だ。
気温はマイナス12度。
吐く息が白い煙みたいに広がる。
登山口の看板は雪に半分埋まっている。
トレースがうっすら残っている。
先行者がいたらしい。
それだけで少し安心した。
最初の1時間は樹林帯の中をひたすら歩く。
音がない。
自分の呼吸と、雪を踏む音だけが響く。
風が強い日だと樹林帯を抜けた瞬間に体が持っていかれそうになる。
その日もそうだ。
体重をかけてピッケルを刺した。
怖い、というよりも、目が覚める感覚だ。
冬靴とアイゼン、ピッケルは必須。
ワカンがあると深雪の区間でかなり楽になる。
装備を惜しんではいけない山だ。
万計沼・真簾沼|凍った湖面は、鏡じゃない
標高を上げながら最初に現れるのが万計沼。
完全に凍っている。
湖面に積もった雪が、風で模様を描いている。
「沼」という名前だけど、景色のスケールは湖だ。
木々が白く縁取られていて、絵のような場所なのに、誰もいない。
その贅沢さが不思議だ。
少し登ると真簾沼に出る。
ここが空沼岳を登る人の間で「最初のご褒美」と呼ばれている理由がわかった。
正面に空沼岳の頂上稜線が見える。
あそこまで行くのか、という気持ちと、行けそうだという気持ちが半々だ。
沼の周辺は雪崩リスクが低くて休憩しやすい。
行動食を食べながら10分ほど立ち止まった。
静かすぎて、食べ物を噛む音が少し恥ずかしかった。
万計山荘という避難小屋もある。
冬季は扉が重いが中に入れる。
緊急時の存在として覚えておくと安心する。
空沼岳山頂(1,251m)|白い世界の終わりと始まり
頂上直下の斜面が一番きつかった。
傾斜が急になって、一歩ずつしか進めない。
風がまともに当たる。
ゴーグルがないと目を開けていられない。
登り始めて約5時間。
頂上に出た瞬間、声が出た。
遮るものが何もない。
南には支笏湖と樽前山。
北には札幌の街が霞んで見える。
手稲山のアンテナまで確認できる。
風速は体感で15メートルくらいあった。
写真を撮る手がすぐかじかむ。
それでも10分は立っている。
帰りたくない。
下山は登りと同じルートを戻る。
膝への負担が大きいので、ストックは下山でこそ活きる。
暗くなる前に下山完了するには遅くとも7時半には登山開始したい。
冬の空沼岳は難しい山ではないが、舐めていい山でもない。
天気が崩れたら躊躇なく引き返す判断が、また来たいと思える山行につながる。
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空沼岳への行き方
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