地図で見つけたとき、正直なところ半信半疑だ。 北海道に「美羅尾山」という山がある。 標高はそれほど高くない。 でも、冬に登ったあの日の景色が忘れられない。 雪をまとった稜線。 風が止んだ瞬間の、あの静けさ。 ここに来なければ、知らないままだった世界がある。
美羅尾山のおすすめスポット
美羅尾山 登山口|朝7時、誰もいない雪道からすべてが始まる
駐車スペースに着いたのは朝7時ちょうど。
他に車は1台もない。
気温はマイナス8度。
吐く息が白く広がって、すぐ消えた。
登山口には案内板がある。
でも雪に半分埋まっている。
それがなぜか、ここへ来た実感になった。
踏み跡は薄い。
前日に誰かが歩いた形跡が、うっすら残っている程度。
スノーシューを履いて、一歩踏み出した。
ぎゅっ、と雪が鳴く音だけが響く。
樹林帯の中はほぼ無風。
杉とダケカンバが交互に現れる。
光が木の隙間から差し込んで、雪面がきらきら光っている。
こういう瞬間のために来ている。
登り始めから山頂まで、ゆっくり歩いて約2時間。
急登は少なく、初心者でも冬山入門として挑める。
ただし、単独行は避けたほうがいい。
美羅尾山 山頂|雲が切れた、その15分間のこと
山頂に着いた瞬間、ガスがかかっている。
真っ白。何も見えない。
風が強くなって、体感温度がぐっと下がった。
正直、心が折れかけた。
行動食を食べながら待つこと20分。
ふいに、雲が動いた。
裂けるように青空が出て、眼下の景色が現れた。
白い稜線が奥へ奥へと続いている。
どこまでが山で、どこからが空なのか分からない。
そういう景色だ。
その青さは、街で見る空の色とは違う。
澄んでいる、というより、濃い。
吸い込まれそうな感覚があった。
晴れていたのは15分ほど。
またガスが流れてきて、視界はゼロに戻った。
でも、見られた。
それだけで十分だ。
山頂の標高は約●●m(現地標識で確認を)。
風を遮るものが何もないため、防風対策は必須。
ダウン1枚では足りない。
下山後の温泉|冷えた体に、41度の湯が染みていく
下山して駐車場に戻ったのは午後1時。
手袋の中でも、指先の感覚が鈍くなっている。
向かったのは近隣の日帰り温泉施設。
入浴料は600〜800円程度。
ロッカーもシャンプーも揃っている、素朴な施設。
浴槽に足を入れた瞬間、思わず声が出た。
熱い、とか気持ちいい、ではなく、
ただ「あ」と。
体の芯まで冷えていたんだと、そこで初めて気づいた。
窓の外に雪景色が見える。
湯気が白く立ち上っている。
露天があれば、もっと最高だ。
でも、この内湯だけで十分すぎた。
食事処で頼んだ豚丼が700円。
量が多くて、全部食べ切れない。
山で使い果たしたカロリーを補填して、
ようやく人間に戻った気がした。
そういう午後だ。
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美羅尾山への行き方
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