地図で見ると、ただの白い山塊に見える。 でも実際に立つと、その静けさに息が止まる。 長留内岳は北海道北部、朱鞠内湖の近くに佇む標高862mの山。 冬になると一面が雪に覆われ、トレースのない斜面が広がる。 誰もいない。風の音だけがある。 そういう場所だ。
長留内岳のおすすめスポット
長留内岳 冬の登山口|朝7時、誰より先にトレースをつける
登山口に着いたのは朝7時ちょうど。
気温はマイナス15度。
車から出た瞬間、鼻の奥が痛くなった。
除雪されていない林道を、スノーシューで踏み進む。
最初の1時間は樹林帯。
エゾマツとトドマツが雪をたっぷり抱えて並んでいる。
その重さが、静かさを作っている。
先行者のトレースはゼロ。
自分の足跡だけが伸びていく。
それが少し怖くて、でも気持ちよかった。
標高を上げるにつれて木が低くなり、視界が開け始める。
振り返ると、朱鞠内の森が白く広がっている。
地図で見ていた景色と、全然違う迫力があった。
山頂直下は急斜面で、膝まで雪に埋まりながら進む。
ここで引き返す人も多いらしい。
実際、このルートを冬にたどる記録はネット上にほぼない。
そういう山だと思って来た。
長留内岳 山頂|360度、白しかない世界があった
山頂に着いたのは11時20分。
登り始めてから4時間20分。
木がなくなる。
空が広くなる。
そして、風がくる。
山頂標識は雪に半分埋まっている。
掘り出して、写真を撮った。
手袋を外したら30秒で指先が痛くなった。
視界は360度。
北に天塩山地の稜線。
南西に朱鞠内湖の白い湖面。
東には幌加内の農地が広がっている。
夏は蕎麦畑になるあの土地が、冬は完全に雪の平野になっている。
人工物が一切見えない方角がある。
北海道でも、そういう場所はそんなに多くない。
風が強くて5分以上は立っていられない。
でもその5分は、今でも鮮明に覚えている。
あの白さと、冷たさと、静けさ。
来てよかった、と思った瞬間だ。
朱鞠内湖畔|下山後、凍った湖の上に立った
下山は2時間半。
登りよりずっと速い。
自分のトレースを辿るのが、妙に安心だ。
車に戻ったのは14時前。
そのまま朱鞠内湖へ向かった。
登山口から車で15分くらい。
湖は完全に凍っている。
1月から3月にかけて、氷の厚さは1mを超えることもある。
湖岸から恐る恐る踏み出すと、しっかり足が乗る。
湖の上に立つ、という感覚が不思議だ。
水面のはずなのに、歩ける。
その非日常感が止まらなくて、気づいたら湖の中心あたりまで歩いている。
風がほぼない日で、湖面には雪が薄く積もっている。
シンシンと静かで、山の上より静かなくらいだ。
朱鞠内湖は冬のワカサギ釣りでも有名。
釣り人のテントがいくつか見える。
自分は釣らず、ただ湖の上に立って、白い世界を見ている。
1時間くらいいた気がする。
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長留内岳への行き方
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