雪が降り積もった稜線に、足跡ひとつない白がつづく。 北海道・芦別市にある隈根尻山(くまねしりやま)は、標高1,016mの里山だ。 けれど「里山」という言葉では、ぜんぜん足りない。 厳冬期、スノーシューで踏み入ったその先に、北海道らしさが凝縮された世界が広がっている。
隈根尻山のおすすめスポット
隈根尻山・登山口|静寂の入口に立つと、街の音が消えた
国道452号線から林道へ折れる。
そこからがもう、別の世界だ。
冬の登山口に着いたのは朝7時半。
気温はマイナス12度。
吐く息が白く固まって、すぐ消えた。
駐車スペースは10台ほど。
平日だったからか、他の車は2台だけだ。
準備している間も、音がない。
風もない。
ただ、雪が積もった木々がそこにある。
スノーシューを装着して、踏み出した最初の一歩。
ふかふかの新雪に沈む感触が、なんとも言えない。
夏道は整備された登山道だが、冬はトレースがあるかどうか次第。
この日は前日に誰かが入ったらしく、薄くルートが残っている。
それでも膝まで埋まる場所が何度かある。
そのたびに「ここまで来たんだ」。
登山口からすでに、来てよかった。
稜線ルート|白い尾根を歩くと、空が近くなった
登り始めて約2時間。
樹林帯を抜けると、急に視界が開ける。
その瞬間、声が出た。
思わず立ち止まった。
白い尾根が、どこまでも続いている。
左手には芦別岳。
右には夕張山地の稜線。
眼下には芦別の市街地が小さく見える。
風が出てきた。
マイナス15度の体感温度に、フードを深くかぶる。
それでも歩みを止めたくない。
雪原には動物の足跡がいくつか走っている。
キツネか、タヌキか。
ここで生きているものがいる、という事実が、嬉しかった。
稜線歩きは約40分。
アイゼンとスノーシューを使い分けながら進む。
雪質によってどちらが快適か変わるので、両方持っていくと安心だ。
風が強い日は、この稜線が核心部になる。
天気予報は前日の夜に必ずチェックしてほしい。
晴れた日の稜線は、それだけで報われる。
山頂(標高1,016m)|誰もいない頂上で、北海道の広さを知った
山頂に着いたのは10時20分。
登山口を出てから約2時間50分。
誰もいない。
ただ、360度の白と青があった。
北には夕張岳。
南には日高山脈の連なり。
晴れた日には、遠く大雪山系まで見えるという。
この日は雲が少し多かったが、それでも十分すぎた。
山頂標識は雪に半分埋まっている。
それを掘り出して、写真を撮る。
この小さな儀式が、なんか好きだ。
おにぎりを2個食べた。
凍りかけていたけど、旨かった。
コーヒーを魔法瓶から注いで、しばらく黙って座っている。
風が止んだ瞬間、完全な静寂が来た。
北海道の山の静けさは、本州の山とは種類が違う。
もっと、原始的な静けさだ。
30分ほど山頂に滞在して、来た道を戻り始めた。
下山は1時間40分。
登山口に戻った時、全身から力が抜けた。
いい疲れだ。
モデルコース
隈根尻山への行き方
HUB CITY
札幌(拠点都市)から行ける旅先を見る →