道東の果て、アスファルトが終わる場所に雌阿寒温泉はある。 観光地らしい賑やかさは何もない。 あるのは、硫黄の匂いと、噴煙を上げる山と、静寂だけ。 冬に来ると、その孤立感がさらに増す。 それがたまらなく好きで、また来てしまった。
雌阿寒温泉のおすすめスポット
野中温泉|硫黄と木造と、昭和の残り香
建物を見た瞬間、時代が止まっている。
木造の湯屋。
曇った窓。
料金は350円。
この値段で、これだけの温泉に入れるのかと毎回驚く。
お湯は白濁した硫黄泉で、温度は高め。
浴槽はひとつだけ。
シャンプーもドライヤーもない。
そういう場所だ。
外には雪が積もっている。
湯船に肩まで沈んで、天井を見上げた。
木の染みと、湯気と、誰かの話し声。
これ以上のものは何もいらないと思った瞬間があった。
地元の人と観光客が同じ湯に浸かっている。
そういう混じり方が好きだ。
夕方5時を過ぎると、地元の人の比率が上がる。
静かに来て、静かに入るのが礼儀だ。
雌阿寒岳登山口〜湖畔散策|噴煙と氷と、生きている山
冬の雌阿寒岳は登れない。
それでも、登山口まで歩くだけで十分だ。
駐車場から5分も歩くと、視界が開ける。
目の前に雌阿寒岳。
白い斜面から、もうもうと噴煙が上がっている。
音もなく、ただ白い煙だけが出続けている。
生きている山というのは、こういうことだ。
オンネトーまで足を延ばした。
凍った湖面が白く光っている。
気温はマイナス15度を下回っている。
耳が痛くなった。
それでも30分以上立ち尽くしている。
湖の色が変わる、と言われる場所だ。
その日は深い灰青色をしている。
誰もいない。
自分だけがここにいるような感覚。
旅でそれを味わいたくて、わざわざ遠くに来る。
野中温泉別館|一軒宿に泊まる、という選択
雌阿寒温泉に宿は数軒しかない。
その中で野中温泉別館に1泊した。
1人1泊8,000円台から。
夕食は山菜と川魚が中心だ。
エゾ鹿の煮込みが出た。
北海道の食材だけで構成されている食卓。
それだけで十分だ。
夜は外に出た。
マイナス12度だ。
星が多すぎて、どこを見ていいかわからない。
硫黄の匂いが冷たい空気に混じっている。
不思議なほど、怖くない。
翌朝5時半に目が覚めた。
誰より先に内風呂に入った。
窓の外がオレンジに染まっていくのを湯船から見ている。
こういう朝を求めていたんだ。
チェックアウトは10時。
もう少しだけいたかった。
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雌阿寒温泉への行き方
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