音更山という名前を、初めて聞いたのは冬だ。 道東の奥深く、人がほとんど踏み込まない山。 標高1932m。静寂と雪だけがある場所。 行くと決めてから、装備を揃えるのに1週間かかった。 それでも行きたかった理由は、うまく言葉にできない。 ただ、あの山は答えてくれた。
音更山のおすすめスポット
音更山|雪の稜線に立つと、世界が静止する
早朝4時半、然別湖の駐車場を出発した。
気温はマイナス18度。
息を吸うたび、肺が冷たくなる感覚がある。
トレースはない。
自分たちだけのラッセルが始まった。
膝上まで雪が積もった斜面を、ひたすら登る。
3時間半。やっと稜線に出た瞬間のことは、今でも覚えている。
360度、山しかない。
大雪山系の白い塊が、地平線まで続いている。
音がない。
風の音すら、どこか遠くに聞こえる。
標高1932m。ここまで来た人間だけが見られる景色がある。
リフトもガイドツアーも、何もない。
自分の足で稜線まで上がること。
それだけが条件だ。
頂上に着いたのは9時20分。
滞在できたのは15分ほど。
寒さと風で、それ以上はいられない。
でも15分で十分だ。
然別湖|凍った湖の上を、歩いた朝
音更山への前日、然別湖に泊まった。
標高810m。北海道で最も標高の高い湖だ。
翌朝6時、外に出た。
湖面が完全に凍っている。
分厚い氷の上に、うっすら雪が積もっている。
踏み出すのに、少し怖さがあった。
恐る恐る歩き始めると、足元から「ミシッ」という音がした。
反射的に止まった。
でも氷は割れない。
厚さは70cm以上ある、と宿の人が言っている。
湖の中央まで歩くと、本当の静けさがあった。
四方を山に囲まれた湖の上。
自分が地図の上の点になったような感覚がある。
2月中旬になると、湖上にアイスバーで飲めるイベントが開かれる。
料金は1杯700円〜。
凍った湖の上でホットワインを飲む体験は、他では難しい。
福原山荘|下山後に体が溶けていく、あの温もり
下山してから3時間。
やっと建物の明かりが見えた時、正直、泣きそうになった。
然別湖温泉エリアにある宿に飛び込んだ。
風呂は42度。
凍えた指先が痛いくらい熱く感じる。
それでも出られない。
30分は湯船にいた。
夕食は18時から。
鹿追町産の食材が並んでいた。
十勝のビーフシチュー、地場野菜のロースト。
山で消費したカロリーを、全部取り戻す勢いで食べた。
翌朝の朝食は7時。
窓から見える景色は、前日より10cmは積もっている。
吹雪いている。
昨日行ってよかった、と心から思った。
1泊2食付きで、1人あたり12,000円〜15,000円ほど。
冬の道東でこの質なら、安いくらいだ。
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音更山への行き方
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