マイナス20度の朝。 吐く息が白く、すぐに消えた。 ぬかびら温泉は、北海道の内陸深く、糠平湖のほとりにひっそりとある。 派手な観光地じゃない。 でも、あの静けさと湯の深さは、ほかでは味わえないものだ。 冬に来てよかった、と心から思った場所。
ぬかびら温泉のおすすめスポット
ぬかびら温泉街|湯煙と雪、ただそれだけの風景
温泉街に宿は10軒ほど。
メインの通りを歩いても、5分で端まで行ける。
小さい。本当に小さい。
でもそれが、ここの正直なサイズ感だ。
宿の玄関を出ると、すぐ雪道。
足を踏み出すたびに、ぎゅっと鳴る。
湯煙が路地から漏れてくる。
夜は街灯がぽつんとあるだけで、暗い。
その暗さが、怖くない。
むしろ、静かで心地よかった。
日帰り入浴できる宿もある。
料金は500〜800円程度。
源泉は単純泉で、しみわたるような柔らかさ。
肌がすべすべになる感覚、あれは本物だ。
朝6時に外に出た。
誰もいない雪道。
湯煙だけが動いている。
ああ、来てよかった、と思った瞬間だ。
糠平湖|凍った湖の上に、静寂がある
1月下旬から3月上旬、糠平湖は完全に凍る。
車で5分。宿の人に「今日は歩けますよ」と教えてもらって、湖面に降りた。
足の下が、湖だ。
その事実を頭で理解しながら、それでも怖かった。
でも一歩、また一歩。
湖の真ん中まで来ると、何もない。
360度、白い景色。
音がない。
風の音だけが遠い。
そのとき初めて、「本当の静けさ」という言葉の意味がわかった気がした。
氷に耳を当てると、ミシッと鳴ることがある。
氷が動いている音だ。
ガイドさんが「湖が生きてる証拠です」と笑った。
夕方4時ごろ、日が傾く。
湖面が薄いオレンジに染まる。
カメラを持っていたのに、しばらく撮るのを忘れた。
ただ、見ている。
タウシュベツ川橋梁|湖に沈む廃橋の、切なさ
ぬかびらに来たなら、絶対に外せない。
そう思っていた場所が、タウシュベツ川橋梁だ。
旧国鉄士幌線のアーチ橋。
1939年に作られて、1955年には廃線になった。
今は湖底に眠っていることが多いが、冬は氷の上に姿を現す。
ゲートがあるので、見学は許可制。
上士幌町の「ひがし大雪自然ガイドセンター」が案内してくれる。
ガイドツアー料金は大人4,000円前後。
ツアーで雪の林道を30分ほど歩いて、たどり着く。
視界が開けた瞬間、橋が目の前にあった。
コンクリートが苔むして、ところどころ崩れている。
美しいとか、雄大とか、そういう言葉じゃ足りない。
「残されてしまったもの」の重さがあった。
誰も喋らない。
5分くらい、ただ、そこに立っている。
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ぬかびら温泉への行き方
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