稜線に雪が残る頃、アポイ岳はひっそりと静まり返っている。 標高810m。数字だけ見れば低い山だ。 でも、ここにしかない岩がある。 ここにしか咲かない花がある。 ユネスコジオパークに認定された理由が、登るたびに少しずつわかってくる。
アポイ岳のおすすめスポット
アポイ岳登山口|夜明け前の駐車場で、覚悟が決まった
午前5時。駐車場に着くと、すでに数台の車がいた。
みんな無言で準備している。
その空気で、この山がただの山じゃないとわかった。
登山口の気温はマイナス4度。
吐く息が白く、すぐに消えた。
最初の1時間は樹林帯を黙々と歩く。
雪が締まっていて、踏み抜く心配はない。
アイゼンが雪をつかむ音だけが響く。
5合目を過ぎたあたりから、景色が変わった。
木が消えて、空が広がる。
足元の岩が、妙に赤みを帯びていることに気づいた。
かんらん岩だ。
地球の内側にあるべき岩が、ここでは地表に出ている。
それだけで少し、別の惑星にいるような気分になった。
頂上まで約3時間。
きつい、というより、ずっと飽きない登りだ。
アポイ岳山頂|810mの頂に、日高山脈が全部見える
山頂に立ったのは午前9時すぎ。
風が強かった。
体感温度はマイナス10度を下回っている。
でも、動けない。
日高山脈が左から右へ、どこまでも続いている。
白い尾根が波のように重なって、その向こうに太平洋が光っている。
夏には高山植物が咲き乱れる斜面も、冬は純白に沈んでいる。
それはそれで、清潔な美しさがあった。
山頂標識に手を触れると、指先がじんとした。
寒さと達成感が混ざって、うまく言葉にならない。
晴れているのに、雲が稜線に引っかかっては流れていく。
その動きをしばらくぼんやり眺めた。
10分くらい立ち尽くしていた気がする。
ガスが出る前に下山するつもりだったのに、なかなか足が動かない。
アポイ岳ジオパークビジターセンター|登る前に寄ると、山の見え方が変わる
正直、最初は「帰りに寄ればいいか」。
でも登山口に隣接しているので、準備しながらふらっと入った。
それが正解だ。
かんらん岩の展示がある。
実際に触れるサンプルもある。
緑がかった、ずっしり重い岩だ。
アポイ岳固有の植物の写真もパネルで並んでいた。
夏に来れば見られるはずの、ヒダカソウやアポイアズマギクの写真。
冬の山頂でその名前を思い出すと、来年また来ようと思えた。
スタッフの方に話しかけたら、今日の雪の状態を教えてくれた。
「5合目から上は凍結してますよ」と。
地図も無料でもらえた。
入館無料なのに、情報量が多い。
山に登る人は、ここから始めるのが絶対いい。
モデルコース
アポイ岳への行き方
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