糠平湖の奥に、まだ人が少ない山がある。 ウペペサンケ山。 アイヌ語で「川下の谷」を意味するその名前を知ったのは、ある冬の夜だ。 標高1848m。ひたすら長い尾根。 たどり着いた稜線からの景色は、北海道の奥深さを、圧倒的な静けさで教えてくれた。
ウペペサンケ山のおすすめスポット
ウペペサンケ山 登山口|夜明け前、ヘッドライトをつけて歩き始める
登山口に着いたのは朝4時半。
気温はマイナス12度。
吐く息が、すぐ白くなって消えた。
糠平温泉から車で20分ほど。
林道の終点に数台分の駐車スペースがある。
冬季は除雪されていないことも多いので、前日に路面状況を確認した方がいい。
登山口から山頂まで、コースタイムは往復で約10時間。
「日帰りでギリギリ」という感覚は間違いじゃない。
とにかく長い。
でも、その長さが逆に、ここをマニアックな山にしている理由だ。
入山者が少ないから、トレースがない日もある。
先行者がいなければ、ひざ下まで雪に埋もれながら自分でルートを切り開く。
それが、怖くて、楽しかった。
東ペケレベツ岳〜ウペペサンケ山 稜線|風と雪と、どこまでも続く白い尾根
稜線に出た瞬間、風が変わった。
樹林帯のあの静けさが、一気に消えた。
東ペケレベツ岳(1571m)を越えると、そこからがウペペサンケ本番。
アップダウンを繰り返しながら、山頂まで尾根を歩き続ける。
左には糠平湖。
右には大雪山系の稜線。
どちらを見ても、視界が広すぎて少し怖くなる。
天気が良ければ、トムラウシ山や十勝岳もはっきり見える。
「こんな景色、他では見られないな」と本気で思った。
稜線上は風が強く、体感温度はマイナス20度を下回ることもある。
バラクラバとゴーグルは必須。
手袋も二重にしていて正解だ。
雪庇に近づきすぎないよう、常に稜線の内側を歩く。
12本爪アイゼンとピッケル、これがないと稜線は歩けない。
糠平温泉|登山後の体を、湯が芯から溶かす
下山したのは16時過ぎ。
足が笑っている。
糠平温泉まで戻って、宿の日帰り入浴を借りた。
料金は600円。
硫黄の匂いが鼻をついて、体の芯がじわじわと温まっていくのがわかった。
糠平温泉は、上士幌町にある小さな温泉街。
旅館が数軒あるだけで、コンビニもない。
そのくらい、何もない場所。
でもそれが、ウペペサンケを登った後には、ちょうどいい。
宿泊する場合は「糠平温泉ホテル」か「中村屋」が選択肢になる。
1泊2食付きで1万円前後から。
夕食に出てきた十勝牛のすき焼きが、じんわりおいしかった。
翌朝、凍った糠平湖を見に行った。
完全結氷した湖面を歩けるのは、だいたい1月下旬から3月上旬。
山と湖、両方を体験できるのが冬のここの強みだ。
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ウペペサンケ山への行き方
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