北海道の道北、音威子府村の奥に、その山はある。 オキシマップ山、標高1,045m。 知る人ぞ知る、という言葉がこれほど似合う山もない。 冬になると、一面の白に包まれる。 人の声がしない。 風の音だけがある。 そのひとりきりの静けさに、どうしても引き寄せられてしまった。
オキシマップ山のおすすめスポット
オキシマップ山登山口|雪の中に、踏み跡ひとつ
早朝6時半、登山口に着いた。
車は1台もない。
前日の雪が、すべての足跡を消している。
積雪は膝上まであった。
ワカンをつけて、一歩ずつ進む。
体がすぐに温まった。
樹林帯の中は、風が止まる。
シラカバとトドマツが並んでいる。
空が細く切り取られている。
冬の道北の山は、装備なしでは絶対に入れない。
スノーシューかワカン、ポール2本は必須だ。
アイゼンだけでは太刀打ちできない。
登り始めて1時間半。
樹林を抜けると、視界が急に開けた。
思わず声が出た。
そういう瞬間がある。
山頂稜線|北海道の果てが、全部見える
稜線に出た瞬間、風が全身に当たった。
マイナス12度だ。
それでも、足が止まった。
天塩山地の山々が、左から右に並んでいた。
遠くにピヤシリ山が見える。
利尻島のシルエットも、この日は確認できる。
誰もいない。
自分の呼吸の音だけがあった。
山頂標識は雪に半分埋まっている。
掘り起こすのに3分かかった。
それがなんだか、妙に嬉しかった。
天気が読めない山だ。
前日まで晴れ予報でも、当日に急変する。
出発前にアメダス音威子府のデータを何度も確認した。
晴れ判定は風速5m以下、視界10km以上が目安だ。
稜線での滞在は30分が限界だ。
体が冷え始めると判断力が落ちる。
それだけは知っておいてほしい。
音威子府村の蕎麦屋|下山後の、あの一杯
下山してすぐ、音威子府村の集落へ向かった。
体はまだ震えている。
「音威子府そば」を食べた。
真っ黒い麺が運ばれてきた。
蕎麦の実の外皮ごと挽いた、この村だけの蕎麦だ。
一口すすると、土の香りがした。
山の余韻と、ちょうど合った。
以前あった「常盤軒」は2021年に閉店した。
今は道の駅「おといねっぷ」内で食べられる。
営業時間が短いので、14時には着いていたい。
村の人口は700人を切っている。
コンビニはない。
ガソリンスタンドは1軒だけある。
だからこそ、この村には余計なものがない。
山から下りてきた体に、それがちょうどよかった。
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オキシマップ山への行き方
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