足跡が、誰もいない。 それだけで、もう十分だ。 北海道の道東、摩周湖の近くにひっそりとそびえるオムシャヌプリ。 標高は1,419m。 冬に登ると、世界が全部白くなる。 風の音しか聞こえない山頂に立ったとき、自分がどれだけ静寂を求めていたかを思い知った。
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オムシャヌプリ登山口|夜明け前、マイナス15度の出発
朝4時45分に起きた。
外気温はマイナス15度。
車のドアを開けた瞬間、息が白い煙になった。
登山口には誰もいない。
当然だ。
こんな時間に、こんな寒さの中、わざわざここに来る人間は多くない。
ヘッドライトをつけて歩き始める。
最初の30分は樹林帯で風はない。
雪が踏み固められた道を、ゆっくり進む。
スノーシューの音だけが響く。
標高が上がるにつれ、木が低くなる。
風が出てきた。
体感温度がぐっと下がる。
「引き返そうか」と何度か思った。
でも足は前に出続けた。
稜線に出たのは2時間後。
一気に視界が開ける。
白と青だけの世界がそこにあった。
摩周湖が見える。
霧一つない、完璧な朝だ。
山頂からの眺望|摩周湖と屈斜路湖、両方見える場所
山頂は広くない。
数人が立てる程度のスペース。
でも360度、遮るものが何もない。
東に屈斜路湖。
西に摩周湖。
晴れた日は両方同時に見える。
これだけで、ここに来る理由になる。
気温はマイナス18度だ。
スマホを出すと、5分で画面が反応しなくなった。
バッテリーが一瞬で減る。
手袋を外して撮影する余裕はない。
でも目に焼き付けた。
カメラより、目が正直だ瞬間だ。
風が強いと長くはいられない。
山頂に留まれたのは15分ほど。
それでも十分すぎるくらいだ。
アイヌ語で「オムシャ」は「越冬する場所」という意味だという。
この山を越えて、どれだけの命が生き延びたんだろうと、下山しながら考えた。
川湯温泉|登山後、硫黄の香りに体が溶ける
下山後、川湯温泉に直行した。
登山口から車で20分ほど。
川湯温泉は強酸性の硫黄泉。
pHは1.8という話を聞いた。
レモン汁より酸い。
日帰り入浴ができる温泉がいくつかある。
入浴料は500〜800円程度。
湯船に浸かった瞬間、体中の力が抜けた。
マイナス15度の中を何時間も歩いた体が、一気に解凍される感じ。
硫黄の匂いが強い。
好き嫌いはある。
でも登山後にここに来ると、この匂いが正解に感じる。
湯上がりに外に出ると、湯気が体から立ち上る。
空気がまだ冷たい。
そのギャップが気持ちよかった。
川湯エリアには食堂もある。
鹿肉を使ったカレーを食べた。
ボリュームがあって600円。
もう一杯食べたいと思ったが、胃が限界だ。
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