アイヌ語で「熊が転げ落ちる山」。 その名前を聞いた瞬間、行くしかない。 北海道の日高山脈の奥深く、標高1979m。 冬になれば雪崩リスクが跳ね上がり、 夏でも簡単には許してくれない山だ。 それでも人を引き寄せる。 あの稜線の鋭さと、空の近さは、ほかでは味わえない。
カムイエクウチカウシ山のおすすめスポット
カムイエクウチカウシ山|熊の山は、想像の3倍、険しかった
八の沢カールを目指して歩き始めたのは、朝5時だ。
ヘッドライトの光だけを頼りに林道を進む。
静寂というより、圧迫感に近い空気。
沢沿いのルートは何度も渡渉がある。
冬季は凍結していて、アイゼンなしでは話にならない。
実際、ルート上で3回ほど足を止めて装備を確認した。
八の沢カールに着いたのは出発から約7時間後。
標高1500m付近で見上げると、山頂への稜線が剥き出しになっている。
岩と雪と空だけの世界。
ほかの登山者は誰もいない。
山頂に立った瞬間、言葉が出ない。
日高の山々が折り重なって、どこまでも続いている。
ここまで来た疲労感と、その景色の落差がすごかった。
泣くか。本当に。
アプローチの林道|この道を歩くだけで、半分消耗する
登山口へのアクセスがまず試練だ。
ナビが途中で沈黙する林道を、約2時間歩いた。
車は林道ゲート手前に止めるしかない。
そこから登山口まで、さらに徒歩で距離を稼ぐ。
冬は雪に埋もれた林道をラッセルしながら進む区間もある。
体力の消耗が想定より早かった。
スタート前に食料と水の計算を見直すことを、強くすすめる。
ただ、この林道が悪いことばかりでもない。
エゾシカが3頭、目の前を横切った。
川の音が絶えず聞こえている。
空気の密度が、街とは全然違った。
歩き始めて2時間、本格的な登山道に入る瞬間、
スイッチが入る感覚があった。
ここから先は、本気の山だ。
そう思った。
冬の八の沢カール|雪と岩と静けさだけがある場所
八の沢カールは、別名「カムエクのベースキャンプ地」とも呼ばれている。
テントを張るなら、ここが最終拠点になる。
冬のカールは、音がない。
風もなく、鳥もいない。
雪が全部吸収してしまうのか、
自分の呼吸と足音だけが聞こえる。
テントの外に出ると、満天の星だ。
帯広方面の光がうっすら見えた以外、
人工の光は何もない。
こんなに暗い空、久しぶりに見た。
朝4時に起きてアタック開始。
気温はマイナス15℃を下回っている。
指が痛くなるのが早く、手袋を2枚重ねにした。
それでも、稜線に出た瞬間に日が差し始めた。
オレンジと白の世界。
これを見るために来た。
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