タツナラシ山という名前を初めて聞いたとき、 どこかに引っ張られるような感覚があった。 北海道の冬山は、ただ白いだけじゃない。 音がない。風がある。空が近い。 そこに立つと、自分がどれだけ小さいか、 あっさりわかってしまう。
タツナラシ山のおすすめスポット
タツナラシ山登山口|朝6時、誰もいない雪の入口に立つ
冬の登山口は静かだ。
駐車場には車が1台もない。
気温はマイナス12度。
息が白くなって、すぐ消える。
登山口の標識は雪に半分埋まっている。
それでも道はわかる。
踏み固められた跡が、うっすら残っている。
アイゼンを装着するのに5分かかった。
手袋を外したら、指が30秒で痛くなった。
北海道の冬山はそういうところだ。
準備を甘く見ると、すぐ体が教えてくれる。
入山届けのノートを開いたら、
前日の記録が1件だけあった。
単独、7時間。
そのひとことが、これから登る山の重さを教えてくれた。
稜線手前の急登|足が止まった。でも止まれない
標高が上がるにつれて、風が変わった。
木の間を抜けていた風が、
稜線に近づくと正面からくるようになる。
急登が始まったのは、登山口から約2時間後。
斜度30度を超えたあたりで、足が重くなった。
雪が深くなって、ひざまで沈む場所もあった。
1歩進んで、半歩ずり落ちる。
それを繰り返しながら高度を上げていく。
きつかった。正直、引き返そう。
でも後ろを振り返ったら、
木の隙間から麓の景色が見える。
それだけで、もう少し登れた。
稜線に出る手前10分が、一番長かった。
時計を見たら10分のはずが、30分に感じた。
冬山の時間の流れ方は、街とは違う。
山頂|360度の白。言葉が出てこない
山頂に着いたのは、登山口を出て3時間40分後だ。
最初の10秒は、何も考えられない。
ただ立っている。
360度、白と青だけの世界。
雲がない。
視界の端から端まで、山が続いている。
風が強かった。体感温度でマイナス20度は下回っている。
それでもそこから動けない。
山頂標識は雪に覆われていて、上だけ出ている。
写真を撮ろうとしたら、
スマートフォンのバッテリーが17%まで落ちている。
寒さでみるみる減っていく。
下山は2時間10分。
登りとは別の静けさがあった。
駐車場に戻ったとき、車のフロントガラスが凍っている。
エンジンをかけて、暖房が効き始めるまでの5分間、
さっきまで自分がいた山頂のことを考えている。
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タツナラシ山への行き方
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