山の名前を声に出してみると、なんだか呪文みたいだ。 ニタトルシュケ。 アイヌ語由来のその響きが、ずっと頭に残っている。 北海道の奥地に、そんな名前の山がある。 冬に行くのは少し無謀だ。 それでも、雪に埋もれた稜線の写真を見たとき、もう止まれない。
ニタトルシュケ山のおすすめスポット
ニタトルシュケ山|雪の中に、誰もいない
登山口に着いたのは朝7時すぎ。
気温はマイナス12度だ。
駐車スペースには、他に車が1台もない。
踏み跡があるかどうか、それだけが心配だ。
雪が深い。
ひざ下まで埋まりながら進む。
スノーシューを持ってきて、本当によかった。
樹林帯を抜けたとき、景色が変わった。
遮るものが、何もない。
白い稜線が空に溶けていく。
声が出ない。
山頂までのコースタイムは夏で約3時間。
冬は雪の状態によって4〜5時間は見ておいた方がいい。
ペースを落として、淡々と歩く。
その繰り返しの先に、あの景色がある。
山頂に立ったのは正午ごろ。
360度、白と青だけの世界だ。
風が強くて、5分も立っていられない。
でも、それでよかった。
あの5分で、十分だ。
登山口へのアクセス|たどり着くまでが、すでに旅だ
最寄りの町から登山口まで、車で40分ほどかかる。
後半の道は除雪が不完全な区間もあった。
4WDじゃないと、正直厳しい。
冬の北海道の道路は、舐めてかかると痛い目を見る。
カーブを曲がるたびに、雪の壁が迫ってくる。
それでも、その道中に見える風景が好きだ。
人の気配が薄くなるにつれ、空が広くなる。
白樺の林が続く。
道路脇にキツネがいた。
こちらを一瞥して、すたすた歩いていった。
登山口の駐車スペースは10台ほど。
仮設トイレはなく、冬は完全に雪に埋まっている。
準備は町でしっかり済ませてから向かうこと。
前日に最寄りの道の駅で情報収集した。
地元の人に積雪状況を聞けたのが大きかった。
その一言が、安全な登山につながった。
下山後の温泉|体の芯まで、溶けていった
下山してすぐ、温泉に直行した。
体が冷え切っている。
指先の感覚が戻ってくるのに、10分くらいかかった。
近隣の温泉施設まで車で約30分。
料金は700円ほどだ。
小さな湯船に、数人の地元のおじさんたちがいた。
誰も話しかけてこない。
お湯の音だけが聞こえる。
それが、ちょうどよかった。
窓の外に雪が積もっている。
湯気でぼんやりしてきた。
山頂で見た白い稜線を、もう一度思い出した。
北海道の冬の温泉は、本州のそれと少し違う気がする。
疲れが溶けるというより、体ごと自然に還っていく感じ。
うまく言葉にできないけれど、確かにそう感じた。
帰り道、コンビニで豚汁を買った。
340円。
最高においしかった。
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ニタトルシュケ山への行き方
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