標高2013m。 北海道の奥地に、こんな山がある。 ニペソツ山。 アイヌ語で「険しい山の頂」を意味するその名の通り、 簡単には近づかせてくれない。 登山口までの道のりだけで心が折れそうになる。 でも、稜線に出た瞬間に全部わかる。 ここに来るために、あの時間が必要だったんだと。
ニペソツ山のおすすめスポット
ニペソツ山 登山口〜前天狗|6時間かけて、やっと景色が始まる
十六の沢登山口を午前4時30分に出発した。
ヘッドライトの光だけが頼りの暗闇。
気温はマイナス8度。
吐く息が白い。
樹林帯を抜けるまでの約3時間、景色はほぼ変わらない。
正直、何度も引き返そう。
前天狗(標高1837m)に出た瞬間、風景が一変する。
視界が開けて、ニペソツ山の山頂が目の前に現れる。
とんがった頂。
真っ白な稜線。
声が出ない。
「ああ、本物だ」。
写真で見ていたあの山が、
空気の中にちゃんと立っている。
標高差1100m、片道約7kmのルート。
体力的にきついのは事実だけど、
前天狗まで来たら、誰でも山頂に吸い込まれていく。
ニペソツ山 山頂(2013m)|風が強くて、5分しかいられない
山頂は、想像以上に狭かった。
人が3〜4人立てるくらいのスペース。
そして風。
体感温度はマイナス20度を超えている。
カメラのバッテリーが一気に残量を失っていった。
でも、360度の眺望は本物だ。
十勝平野が白く広がる。
大雪山系がくっきり見える。
日高山脈の稜線まで見えた気がした。
5分で限界が来て、稜線を下り始める。
それでよかった。
長居できる山じゃない。
来て、見て、下りる。
そのシンプルさが、この山の流儀なんだ。
下山後、上士幌の温泉「ぬかびら源泉郷」に直行した。
体の芯まで温まるのに、小一時間かかった。
冷え切った体に染み込む湯の温度が、
この日いちばんの幸せだっただ。
上士幌町の夜|山が終わっても、旅は続いている
上士幌の町は小さい。
コンビニは1軒。
でも、夜の食堂でジンギスカンを頼んだら、
肉の質が驚くほどよかった。
隣のテーブルの地元のおじさんが話しかけてきた。
「今日、ニペソツ行ったの?」
「よく帰ってきたね」と笑った。
それが褒め言葉なのか、呆れなのか、
今もよくわからない。
翌朝、宿の窓から山を見た。
くっきりと青空の中に、あのとんがった頂が見える。
昨日、あそこにいたんだ。
遠くから見るニペソツは、
登っている時よりも、もっと険しく見える。
「よく帰ってきた」の意味が、少しわかった気がした。
北海道の奥地に、まだこういう山がある。
そのことが、ただただうれしかった。
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ニペソツ山への行き方
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