地図で見つけたとき、読み方すら分からない。 ピウケナイ山。 アイヌ語で「水源の山」を意味するらしい。 北海道の奥、人の声がほとんど届かない場所に、その山はある。 冬に行くと決めたのは、雪に埋まった稜線の写真を見たから。 あの静けさの中に、立ってみたかった。
ピウケナイ山のおすすめスポット
ピウケナイ山|誰もいない雪原に、足跡をつけていく
登山口に着いたのは朝7時。
気温はマイナス12度だ。
息が白い。手がかじかむ。
それでも空は、嘘みたいに青かった。
踏み跡はほぼない。
前日に雪が降ったのだろう。
トレースを自分でつくりながら、ひたすら登る。
音がない。
風の音だけがある。
標高は900m台。
高くはない。
でも北海道の冬山は、標高じゃない。
ひざ下まで沈むラッセルが続いた。
2時間半かけて、やっと頂上に出た。
目の前に広がったのは、白い山並み。
十勝の平野が霞の向こうに見える。
誰もいない。
自分の足跡だけが、来た道に続いている。
こういう景色のために、冬山に来る。
そう思った瞬間だ。
登山道の樹林帯|霧氷の森を、静かに抜けていく
頂上よりも、途中の樹林帯が好きだ。
標高600mあたりから、木々が白くなってくる。
霧氷だ。
枝の先まで、細かい氷の結晶がついている。
陽が当たると、キラキラと光る。
カメラを向けると、シャッターを切る手が止まらない。
風がないと、完全な無音になる。
その中を歩くのは、不思議な感覚だ。
怖いとは違う。
静かすぎて、自分の存在が薄くなる感じ。
霧氷は午前中が見頃だ。
10時を過ぎると、陽の熱で崩れ始める。
早起きして登った甲斐があった。
樹林帯を抜けるのに約1時間半。
その間、誰とも会わない。
これだけの景色が、ひとり占めだ。
下山後の本別町|体が冷えたら、町の温かさを頼る
下山してすぐ、温泉に向かった。
ふるさとの丘広場にある「本別温泉ほんべつ」。
入浴料は600円だ。
脱衣所で靴下を脱ぐと、足の指がじんじんした。
4時間以上、極寒の雪山にいたのだ。
それが当然だ。
お湯に浸かった瞬間、声が出た。
熱くて、気持ちよくて、少し痛い。
そういう感覚。
湯上がりに食堂で食べた豚丼が、信じられないくらいおいしかった。
米がふっくらして、豚肉に甘いタレが絡んでいた。
疲れた体に、とにかく染みた。
本別町は小さな町だ。
コンビニは1軒だけある。
でも、冬山を終えた後に帰ってくる場所として、十分だ。
人の温かさが、ちゃんとあった。
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ピウケナイ山への行き方
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