地図で見ると、ただの点。 でも実際に立つと、北海道の広さを全身で受け取る場所だ。 ピラトコミ山。 標高1,631m。 道東の果て、阿寒の奥にひっそりとある。 冬に来ると、音が消える。 風と雪だけが残る。 そういう山が、まだ北海道にはある。
ピラトコミ山のおすすめスポット
ピラトコミ山登山口|夜明け前に靴紐を結ぶ
出発は朝5時半だ。
気温マイナス14度。
車のドアを開けた瞬間、空気が顔に刺さる。
登山口には誰もいない。
足跡もない。
トレースゼロ。
その日、最初の人間がここに来たということ。
スタートからすでに雪は膝まである。
ワカンをつけてもズボズボ沈む。
1時間で500mしか進めない。
でも、ふと立ち止まると気づく。
音がない。
風もない。
木の枝に積もった雪が、ときどきドサッと落ちる音だけ。
それだけで、十分だ。
来てよかった。
山頂より先に、そう思えた場所があった。
山頂稜線|360度、人間がいない証明
稜線に出た瞬間、風が来た。
体ごと持っていかれそうな風。
体感温度はマイナス25度を超えている。
視界が開けた。
阿寒富士が見える。
雌阿寒岳が見える。
屈斜路湖も、うっすら見える。
人工物がひとつもない。
道路も、建物も、鉄塔も。
スマホを出したら手が震えた。
手袋を外したのは10秒だけにした。
それでも写真を撮りたかった。
山頂に滞在できたのは15分ほど。
風が強すぎて、それ以上は無理だ。
でも15分で十分だ。
ここに来た理由を、全部回収した気分だ。
標高1,631mの稜線は、そういう場所だ。
阿寒湖温泉|下山後の湯は、別次元のうまさ
下山して車に戻ったのは午後3時過ぎ。
8時間以上、雪の中にいた。
阿寒湖温泉まで車で約50分。
その間、ヒーターをMAXにしている。
足の感覚が戻ってくる。
じんじんする。
生きてる感じがする。
温泉に入った。
硫黄の匂い。
茶褐色のお湯。
体が溶けた。
本当に溶けた。
山で凍りかけた体が、じわじわほどけていく。
日帰り入浴は600〜800円が相場。
時間は15時〜21時ごろまで使える宿が多い。
夕食は鹿肉のジビエ鍋を食べた。
1,800円。
疲れた体に、重くてうまいものが入ってきた。
山と温泉と飯。
北海道の冬の旅は、この三つで完結する。
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ピラトコミ山への行き方
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