松前半島の最奥に、静かに立ちあがる山がある。 標高1,072m。数字だけ見れば大した高さじゃない。 でも冬の大千軒岳は、別次元だ。 ふかふかの雪原、誰も踏んでいないトレース、息が白くなるたびに 「ここに来てよかった」。 キリシタンの歴史が眠るこの山に、冬だけ見せる顔がある。
大千軒岳のおすすめスポット
大千軒岳 冬山アプローチ|ラッセルの先に、白い稜線が待っている
登山口は千軒平コース起点、新道コース入口付近。
冬季は除雪されていない林道をスノーシューで歩く。
ここがきつかった。
林道だけで往復4km近くある。
ラッセルが深いと、ただ歩くだけで体力を持っていかれる。
出発は朝6時にした。
空がまだ暗い。気温はマイナス12度。
でも空気がきんと澄んでいて、頭が覚めた。
樹林帯を抜けると、急に視界が広がる。
雪庇が張り出した稜線が目に飛び込んできる。
思わず足が止まる。
山頂直下は傾斜がきつい。
アイゼンとピッケルは必須。
夏道とルートが変わるので地図読みが必要だ。
山頂に着いたのは午前11時。
津軽海峡が見える。
天気が良ければ本州の山影まで見える日もあるという。
その日は薄雲越しに、海がきらきらしている。
ただそれだけで、十分すぎた。
千軒平|江戸時代の殉教地が、雪に覆われて別の顔を見せる
大千軒岳の名は、江戸時代に処刑されたキリシタンたちに由来する。
千軒平はその処刑場跡とされる場所だ。
夏に来ると、草原の中に小さな碑がある。
でも冬は、すべて雪の下に沈む。
どこまでも白い。
風の音だけがする。
そこに立つと、なんとも言えない気持ちになった。
怖い、というのとも違う。
静か、というのが一番近い。
何百年も前にここで命を落とした人たちのことを、
こんな山奥の雪の中で思うことになるとは思っていない。
歴史の重さみたいなものが、雪越しにじわっと伝わってくる感じ。
千軒平は山頂への途中にある。
標高は900m台。
ここで小休止をとった。
風を遮る樹林もなく、体感温度はぐっと下がる。
防寒具を一枚追加するのを忘れずに。
松前町の前泊拠点|山の前日、ここで体を整えた
大千軒岳は、前泊が現実的だ。
登山口まで函館市内から車で2時間以上かかる。
朝6時スタートを考えると、松前町内に泊まるのが正解だ。
松前には温泉旅館がいくつかある。
泊まったのは「松前温泉」エリアの小さな宿。
1泊2食付きで約8,000円台。
料理がよかった。
ヒラメの刺身と、タコのしゃぶしゃぶ。
冬の日本海の幸が、疲れた体に染みた。
温泉は単純温泉。
ぬるめで、長く浸かれる。
登山前夜に体を温めるのにちょうどいい。
翌朝は宿を5時半に出た。
暗い中、車を走らせて登山口へ。
空に星がのこっている。
こういう朝の始まり方、嫌いじゃない。
帰りにも松前城周辺を少し歩いた。
冬の松前城は人が少なく、城と雪だけがあった。
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大千軒岳への行き方
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