北海道の内陸深く、天塩川が静かに流れる場所がある。 名寄から車で40分ほど。 看板も少なく、知らなければ通り過ぎてしまうような道の先に、その温泉はあった。 冬に来てよかった。 雪に埋もれた川沿いの景色が、ここでしか見られないものだったから。
天塩川温泉のおすすめスポット
天塩川温泉|雪の向こう側に、茶色い湯が待っている
扉を開けると、硫黄でも塩素でもない、独特の匂いがした。
ここの湯は茶褐色。
ナトリウム炭酸水素塩泉で、肌にぬるっとまとわりつく感触がある。
「美人の湯」という言葉が脳裏をよぎったけど、そんな言い方では足りない。
温度は42度ほど。
熱すぎず、長く浸かっていられる。
露天風呂に出ると、目の前に天塩川が広がっている。
気温はマイナス10度近く。
湯気がもうもうと上がって、川の向こうの木々がかすんで見える。
観光客は少なく、地元のお爺さんが一人、黙って湯に浸かっている。
その静けさが、妙に心地よかった。
入浴料は大人600円。
これだけの湯が、この値段で入れるのかと少し申し訳なくなった。
天塩川の冬景色|マイナスの朝、川は凍っている
翌朝、7時に宿を出た。
外はまだ暗く、気温はマイナス14度だ。
吐く息が白く固まるような寒さの中、天塩川の川岸に立った。
川が、凍っている。
完全にではないが、水際から氷が張り出して、中央だけが黒く流れている。
音が、ない。
あれだけの水量の川なのに、冬は音を立てない。
それが不思議で、しばらく動けない。
太陽が出てくると、氷の表面が金色に光り始めた。
カメラを向けたけど、目で見たものの半分も写らない。
ここは写真で伝えられない場所だ。
来ないと分からないし、冬に来ないと見られない。
そういう景色が、日本にまだあることに少し安心した。
中川町の街歩き|人口1,600人の町で、食堂を探した
中川町の人口は約1,600人。
メインストリートを歩いたが、10分もあれば端から端まで行けてしまう。
飲食店は数える程しかなく、やっと見つけた食堂に入った。
日替わり定食が750円。
豚汁が大きな椀で来て、体の芯から温まった。
おばちゃんに「どこから来たの」と聞かれた。
東京からと答えたら、「なんでまたこんなとこに」と笑われた。
それが嬉しかった。
観光地化されていない町では、住んでいる人との距離が近い。
商店街には廃業した店舗もあったが、町立の博物館「なかがわ考古博物館」は面白い。
ここで発掘された魚竜の化石が展示されていて、入館料は無料。
誰もいない展示室で、1億年前の生き物と向き合う時間があった。
それもこの町の、ちゃんとした体験だ。
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天塩川温泉への行き方
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