稜線の向こうに、白い世界が広がっている。 標高1491m。 北海道の冬山の中で、暑寒別岳はひときわ孤高に立っている。 リゾートでも観光地でもない。 ただの、山だ。 だからこそ、行きたくなる。 その静けさと厳しさが、妙に忘れられない。
暑寒別岳のおすすめスポット
暑寒別岳 冬の登山口|静寂が、ここから始まる
増毛町側の登山口に着いたのは、朝6時前だ。
気温はマイナス12度。
車から出た瞬間、空気が肺に刺さった。
駐車場には先客の車が1台。
それだけ。
人の気配がほとんどない。
夏は花の山として知られているらしい。
でも冬は違う。
雪に覆われた斜面が、ただただ続いている。
スノーシューを履いて、歩き出す。
踏み跡はうっすらと残っている。
トレースを外れると、膝まで沈む。
そのたびに、自分がどこにいるかを確認した。
急がなくていい。
こういう山は、焦った人が負ける。
深呼吸して、ゆっくり高度を稼いでいく。
その繰り返しだ。
山頂稜線|風が、景色ごと連れていきそうだ
登り始めて約4時間。
稜線に出た瞬間、風が正面から来た。
体ごと持っていかれそうな強さだ。
思わず立ち止まる。
ゴーグルの奥から、白い世界を見た。
日本海が、遠くに光っている。
増毛の街が、米粒みたいに見える。
天気がよければ、利尻島まで見えるらしい。
この日はうっすらと、その輪郭が確認できる。
山頂はそこからさらに30分。
雪煙が舞う中を、ゆっくり進んだ。
着いたとき、誰もいない。
その静けさが、むしろ怖かった。
自分の呼吸音しか聞こえない。
5分いたら、下りた。
長居できる場所じゃない。
でも、あの景色は10年経っても覚えている。
増毛町の宿と温泉|下山後の体が、ようやく戻ってくる
下山して車に乗り込んだのは、16時を過ぎている。
指先の感覚がない。
増毛町の中心部まで車で約30分。
町の宿に戻って、真っ先に風呂へ入った。
増毛温泉は源泉かけ流し。
湯温は41度前後。
体の芯まで冷えていたせいか、しみるように温かかった。
夕食は宿で出た増毛産のボタンエビ。
甘かった。
山での緊張が、一気にほどけていく感じがした。
増毛町は日本酒の蔵もある。
国稀酒造は明治期創業の老舗で、翌朝立ち寄った。
試飲させてもらったのは、すっきりした辛口。
山の後の酒は、格別だ。
観光のために来た町じゃないけれど、
それが逆によかった。
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暑寒別岳への行き方
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