北海道の奥地に、ほとんど知られていない山がある。 毛鐘尻山。 読み方すら迷う、そのマイナーさが逆に引っかかった。 冬に行った。 雪が膝まで埋まった。 それでも登ってよかったと、頂上で思った。 人の声がまったく聞こえない。 風の音だけがある、あの静けさは忘れられない。
毛鐘尻山のおすすめスポット
毛鐘尻山 登山口|朝6時、誰もいない白い世界から始まる
登山口に着いたのは朝6時過ぎ。
駐車スペースには車が1台もない。
完全に貸し切り状態だ。
冬季は積雪が深く、トレースがない日も多い。
この日もそうだ。
先行者ゼロ。
スノーシューを持ってきて正解だ。
装備がないと正直きつい。
最低でもスノーシューかワカン、ストック2本は必須だ。
ツボ足で突っ込んでいた登山者を過去に見かけたが、あれは無謀だ。
登り始めて15分、すでに汗だくになった。
気温はマイナス8度。
それでも体は熱くなる。
樹林帯の中は風がなく、シン、と静まりかえっている。
雪を踏む音だけが響く。
あの孤独感は、街では絶対に味わえない。
毛鐘尻山 稜線|風が強くなる。視界が開ける。全部が白かった
樹林帯を抜けると、急に視界が広がった。
ここが核心部だ。
稜線に出た瞬間、横から風が来た。
体が3センチ押された気がした。
体感気温はおそらくマイナス15度を超えている。
でも、目の前に広がっていた景色で全部忘れた。
白い山並みが、地平線まで続いている。
人工物がひとつも見えない。
電線も、建物も、道路標識も、何もない。
ただの白と青だけがある。
ここで10分立ち止まった。
写真を撮るのを忘れて、ただ見ている。
カメラのバッテリーは寒さで残量30%から一気に落ちた。
冬山撮影では予備バッテリーを内ポケットで温めておくのが鉄則だと改めて思い知った。
稜線歩きは約40分。
風がある日は侮れない区間だ。
毛鐘尻山 山頂|誰もいない頂上で、カップ麺を食べた
山頂に着いたのは登り始めから約2時間40分後。
標準タイムより少し遅れた。
ラッセルが思ったより重かった。
山頂には誰もいない。
当然だけど、改めてそれが嬉しかった。
風を避けられる場所を探して、ザックを下ろした。
ガスストーブで湯を沸かした。
カップヌードルのシーフード味。
550mlの水が沸騰するまで約6分かかった。
気温が低いと時間がかかる。
食べながら、また景色を見ている。
雲がゆっくり動いている。
誰にも邪魔されない時間がそこにあった。
下山は1時間50分。
登りのトレースがあったのでサクサク進めた。
駐車場に戻ったのは午後1時頃。
車は相変わらず自分のだけだ。
それがなんとなく、誇らしかった。
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毛鐘尻山への行き方
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