北海道の山あいに、ひっそりとある温泉地。 滝の湯温泉は、遠刈田でも登別でもない。 知る人ぞ知る、という言葉がぴったりくる場所だ。 冬に訪れた。 雪がしんと積もって、湯けむりだけが空に昇っている。 あの静けさを、もう一度味わいたいと思っている。
北海道・東川町の山懐に抱かれた滝の湯温泉は、知る人ぞ知る秘湯である。旭川空港から車で約40分、冬ともなれば道中は白銀の世界だ。シラカバ林を縫う風がしんと耳に染み入り、湯けむりだけが鉛色の空へ静かに溶けていく。源泉かけ流しの湯は肌にとろりと絡みつき、芯から体をほぐしてくれる。湯上がりには、地元産の旭川ラーメンで温まるのも一興。硫黄のかすかな香りが鼻をくすぐる浴場は、平日なら地元客との語らいも生まれやすい。アクセスにはスタッドレス装着のレンタカーが必須。自販機は限られるため、飲み物は事前に用意しておくとよい。
滝の湯温泉のおすすめスポット
滝の湯温泉|雪の日に、ひとりで浸かる贅沢
入浴料は確か400円ほどだ。
そのくらいの気軽さで、扉を開ける。
中は古びた木の香りがする。
脱衣場は狭い。
ロッカーもなく、棚に荷物を置くスタイルだ。
でも湯に浸かった瞬間、そんなことはどうでもよくなった。
ほんのり硫黄の匂い。
体の芯から温まる感じ。
冬の平日、先客はひとりだけだ。
無言で湯に浸かる。
外では雪が降っている。
こういう温泉が、好きだ。
飾らなくて、うるさくなくて、ただ湯がいい。
地元のおじさんが入ってきて、「寒いねえ」と言った。
それだけの会話が、なぜか嬉しかった。
30分ほど入って、体が真っ赤になって上がった。
外気がキンと冷たくて、それがまた気持ちよかった。
温泉街の路地|観光地じゃないから、本物がある
温泉街、と呼ぶには静かすぎる。
旅館が数軒、小さな商店が一軒。
それだけだ。
冬の午後3時ごろ歩いた。
人とほとんどすれ違わない。
雪が踏み固められた道は、滑る。
慎重に歩く。
息が白い。
それでも、なぜか歩きたくなる場所だ。
古い旅館の玄関先に、雪かきのスコップが立てかけてある。
軒下から、つらら。
誰かが干した洗濯物が凍っている。
生活の匂いがする温泉地だ。
観光客向けに整備されていないから、本物の日常がそこにある。
カメラを向けると、絵になる場面が次々と現れた。
こういう場所は、SNS映えとは無縁だ。
でも記憶には深く刻まれる。
15分も歩けば端まで行ってしまう。
それくらい小さい。
でも何度も往復したくなった。
周辺の自然|湯上がりに、雪原を見た
温泉を出て、少し車を走らせた。
10分も行かないうちに、視界が開けた。
雪原が広がっている。
どこまでも白い。
そこに、山の輪郭が重なる。
声が出ない。
北海道の冬の景色は、何度見ても慣れない。
スケールが違いすぎる。
湯上がりの体は温かいままだ。
頬だけが冷たい風に刺される。
そのコントラストが、気持ちよかった。
夕方4時を過ぎると、急速に暗くなる。
北海道の冬の日没は早い。
17時には真っ暗だ。
空が茜色に染まって、雪面がオレンジになった。
たった5分間の出来事だ。
これを見るためだけに、また来てもいい。
温泉と夕日と雪原。
それだけで、旅が完成する。
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滝の湯温泉への行き方
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