札幌から車で2時間。 そこに、知る人ぞ知る山がある。 狭薄山(さみしやま)、標高1,296m。 派手さはない。 でも冬、この山に登った人は口をそろえて言う。 「また来たい」と。 雪原の静けさと、山頂から広がる白い世界。 そこには、言葉にならない何かがある。
狭薄山のおすすめスポット
狭薄山登山口|静寂が、ここから始まる
登山口に着いたのは朝7時過ぎ。
気温はマイナス12度だ。
車を降りた瞬間、空気が違うとわかる。
音がない。
本当に何も聞こえない。
風すら止まっている。
駐車スペースは数台分しかない。
平日でも先客が2組いた。
みんな静かに準備している。
山に来る人間の空気感は独特だ。
スノーシューを装着して歩き出す。
最初の30分は緩やかな林の中。
踏み跡はあるが、ほとんど雪に埋もれている。
誰かが歩いた証拠が、かろうじて残っている程度。
それでいい。
ここはそういう山だ。
針葉樹の間から差し込む朝の光が、雪面に散らばる。
その光の粒を踏みながら進む。
来てよかったと思ったのは、まだ山頂にも着いていない時間だ。
狭薄山山頂|360度、白だけがある
山頂まではコースタイム約3時間。
実際は3時間15分かかった。
急登が2か所ある。
アイゼンを持っていったが、使う場面はない。
スノーシューのまま、ひたすら登る。
山頂が見えてきたとき、思わず立ち止まった。
空が急に広くなる。
木がなくなって、視界が開ける。
その瞬間が、この山の核心だ。
360度の展望。
夕張山地の稜線が連なっている。
遠くに日高山脈が見える。
そしてどこまでも続く、白い北海道の平野。
風は強かった。
マイナス18度まで体感温度が下がる感じ。
それでも10分以上そこにいた。
動けなかったのではなく、動きたくない。
コンビニで買った500円のおにぎりを食べながら、ずっと景色を見ている。
こんなおにぎりが、こんなに旨いと思ったことはない。
下山後の由仁温泉|冷えた体に、湯が沁みる
下山したのは午後2時半。
足が笑っている。
スノーシューを外した瞬間の軽さと、全身の疲労感が同時にくる。
登山口から車で約20分、由仁温泉がある。
日帰り入浴は600円。
地元の人が多く、登山者は少数派だ。
露天風呂に入った。
空を見上げると、空が白くなっている。
雪が降り始めている。
体の芯から冷えていたのだと、湯に浸かって初めてわかった。
指先が痛いほど温まっていく感覚。
これが好きで、冬山に来てしまう気がする。
湯上がりに飲んだ牛乳は150円。
何も考えずにただ飲んだ。
狭薄山は、ガイドブックにほとんど載っていない。
SNSの写真もそこまで多くない。
でも、知っている人は毎年来る。
そういう山が、一番信頼できる。
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狭薄山への行き方
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