北海道の山に、こんな場所があったのか。 立牛岳に初めて登ったのは、2月の真冬だ。 気温はマイナス15度。 でも、山頂から見えた景色に、寒さを忘れた。 白い稜線が、地平線まで続いている。 ここはまだ、人があまり知らない山だ。 だから余計に、特別に感じた。
立牛岳のおすすめスポット
立牛岳 登山道|踏み固められていない雪の上を、自分で歩く
登山口に着いたのは朝7時。
気温はマイナス12度だ。
トレースはない。
前日の雪で、道が完全に消えている。
スノーシューを履いて、地図だけを頼りに進む。
膝まで沈む雪の感触が、妙に気持ちいい。
誰も歩いていない雪原に、自分の足跡だけが残っていく。
山頂まで約4km、標高差は600m程度。
夏なら2時間のコースが、冬は3時間半かかった。
でも、急ぐ理由がない。
樹氷が木の枝を白く包んでいた。
風が吹くと、氷の粒がさらさらと落ちてきた。
静かだ。
本当に静かで、自分の息の音だけが聞こえる。
こういう孤独は、山でしか味わえない。
立牛岳 山頂|360度の雪景色。言葉が出ない
山頂に立った瞬間、風が止んだ。
運がよかっただ。
でも、そのタイミングで広がった景色は、忘れられない。
真白い稜線が、東から西まで続いている。
遠くに大雪山系のシルエットが見える。
雲が低く、山と空の境界線が曖昧になっている。
一緒に登った友人が「やばい」とだけ言った。
それ以上の言葉は、必要ない。
山頂での気温はマイナス18度。
手袋を外してカメラを操作したら、30秒で指が痛くなった。
それでも、写真を撮りたかった。
この景色を、持ち帰りたかった。
滞在できたのは15分ほど。
長居すると体が危険だと、体が教えてくれた。
下山を始めながら、何度も振り返った。
下山後の温泉|体の芯まで、ゆっくり溶けていく
下山後、車に乗り込んだ時に全身の力が抜けた。
山から約25分、地元の日帰り温泉に向かった。
料金は600円。
ロッカーに道具を押し込んで、湯船に浸かる。
ああ、生きてる。
そういう感覚が、じわじわと来た。
内湯は広くはないが、窓から雪景色が見える。
湯温は42度。
マイナスの世界から来た体には、ちょうどよかった。
ほかの客は地元のお年寄りばかりだ。
「今日は山に行ったのか」と聞かれた。
「立牛岳です」と答えたら、「若いな」と笑われた。
悪い気はしない。
温泉を出た後、駐車場で空を見上げた。
星が出ている。
北海道の冬の星は、異常に多い。
山の疲れが、静かに体から離れていった。
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立牛岳への行き方
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