稜線に出た瞬間、風が全部持っていく。 言葉も、疲れも、余計なものぜんぶ。 西川岳は北海道・夕張山地の端に静かに立っている。 標高は高くない。 でも冬に来たら、別の山になる。 雪原と樹氷と、誰もいない白い稜線。 そこにたどり着くための3時間が、なぜか恋しくなる山だ。
西川岳のおすすめスポット
西川岳登山口|朝6時、誰より先にトレースをつける
登山口に着いたのは朝6時15分だ。
気温はマイナス14度。
車のドアを開けると、空気が頬を刺す。
駐車スペースは5台ほど。
この日は先行者ゼロだ。
新雪の上に、自分のスノーシューの跡だけが続いていく。
それが妙に気持ちよかった。
序盤はなだらかな樹林帯。
エゾマツが雪をたっぷり抱えている。
風もなく、音もない。
自分の呼吸音だけが聞こえる時間が続く。
標高を上げるにつれ、木が低くなっていく。
空が広くなる。
稜線手前で振り返ると、夕張の山並みが横一列に並んでいた。
ここまで約2時間。
足が重くても、景色が引っ張ってくれる。
冬山初心者には少しハードルがある。
でも、アイゼンとスノーシューがあれば十分歩ける。
ガイドなしで入る場合は天候確認を必ずしてから。
西川岳山頂(標高約1,012m)|風と雪と、果てしない白
山頂に立ったのは9時20分ごろ。
登山口から約3時間5分。
稜線に出た途端、風が変わった。
それまで穏やかだった空気が、一気に刃になる。
体感気温はおそらくマイナス20度を下回っている。
でも目の前の景色で、寒さが飛んだ。
360度、遮るものがない。
夕張岳、芦別岳、遠く大雪山系。
雲一つない日だったから、稜線が全部見える。
山頂標識の周りに樹氷が育っている。
白い珊瑚みたいに、全方向に伸びている。
風が強い日ほど、造形が鋭くなるらしい。
ここに来るのが2回目だったが、前回と全然違う顔をしている。
同じ山に何度来ても、冬山は毎回別物だ。
山頂での滞在は15分が限界だ。
手袋2枚重ねでも指先が痺れてくる。
それでも写真を撮る手が止まらない。
下山後の夕張温泉エリア|凍えた体を、40度が溶かしていく
下山したのは12時半ごろ。
足はガクガク、指先の感覚がまだ戻り切っていない。
そのまま車で夕張方面へ向かった。
登山後は温泉一択だ。
夕張周辺にはいくつか日帰り入浴を受け付けている施設がある。
この日は「ゆうばり温泉ホテルシューパロ」を使った。
料金は600円。
タオル持参なら追加費用なし。
湯船に沈んだ瞬間、山の3時間が一気に溶け出した。
無色透明のさっぱりした泉質。
窓の外にはまだ雪が積もっている。
その対比がたまらない。
昼食は夕張市内の食堂で。
石炭ラーメンという名のご当地ラーメンを食べた。
900円。
こってり醤油ベース、太麺、ボリューム満点。
体が求めているものが全部入っている。
夕張は観光地としては静かな街になった。
でもだからこそ、山と飯と温泉だけに集中できる。
それでいいと思っている。
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西川岳への行き方
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