北海道の最北端に近い、小さな温泉街。 人口より牛の数が多いと言われる豊富町に、 その湯はある。 石油の匂いがかすかに漂う、茶色い湯。 全国でもここだけと言っていい、油分を含んだ温泉だ。 皮膚疾患に効くと聞きつけた人たちが、 全国から長期滞在でやってくる。 観光地っぽさは、ほぼない。 それがいい。
豊富温泉のおすすめスポット
豊富温泉共同浴場|茶色くて、ぬるくて、なぜかやみつきになる湯
扉を開けると、ふわっと石油の匂いがした。
思わず「これが温泉?」と立ち止まる。
湯の色は、麦茶より濃い茶色。
透明度はほぼゼロ。
でも足を入れた瞬間、妙にやわらかい。
ぬるっとした感触が肌を包む。
温度は41〜42℃くらい。
熱すぎず、長く浸かれる。
地元のおじさんが「肌がツルツルになるぞ」と言っている。
半信半疑で上がったら、本当にそうだ。
浴場はシンプルそのもの。
内湯だけ、洗い場は10席ほど。
料金は420円。
朝7時から営業しているので、
宿を出る前に一風呂という使い方もできる。
地元の人と旅人が同じ湯に浸かっている。
そういう場所だ。
温泉街の朝散歩|人がいない、音がない、雪だけがある
冬の朝6時、外に出た。
気温はマイナス15℃。
息が白いどころか、凍りつく感覚。
温泉街の通りには誰もいない。
足跡すら、まだない。
雪が音を吸って、静かすぎるくらい静かだ。
旅館の灯りだけが、ぽつぽつと窓から漏れている。
歩いて5分もあれば、街の端まで行ける。
そのくらい小さな温泉街だ。
でも歩いて正解だ。
霧が温泉の湯けむりと混ざって、
視界が白くぼやける光景は、ここでしか見られない。
写真を撮ろうとしたら、スマホの画面が寒さで固まった。
体が冷えたら、すぐ共同浴場に戻ればいい。
そういう使い方がこの街には合っている。
観光スポットは何もない。
それでも、歩く価値がある朝だ。
川島旅館の湯治めし|素朴すぎて、なぜか泣きそうになった
豊富温泉には、湯治を目的とした長期滞在者が多い。
宿も、そういう人向けの作りになっている。
川島旅館の夕食は、飾り気が一切ない。
焼き魚、煮物、白飯、みそ汁。
それだけ。
でも、日本海でとれたホッケの脂がすごかった。
箸を入れた瞬間にほぐれる。
皮まで食べた。
1泊2食付きで8,000円台から泊まれる。
このご時世、信じられない価格だ。
食堂には、長期滞在中らしいおばあさんが2人。
「どこから来たの?」と聞かれた。
「東京です」と答えたら、「遠いねえ」と笑われた。
その会話が、旅のハイライトだ。
温泉宿に来て、湯に浸かって、地元の人と話す。
それで十分だ。
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