北海道の北端近く、人よりも雪のほうが多い場所がある。 音威富士。 名前を聞いても、どこにあるかわからない人がほとんどだ。 それでいい。 たどり着くまでの道のりごと、この山の魅力だから。 冬の音威富士は、静かすぎて怖いくらいだ。
音威富士のおすすめスポット
音威富士スキー場|ゲレンデの端に、誰もいない世界があった
リフトは1本だけ。
待ち時間、ほぼゼロ。
それが音威富士スキー場の日常だ。
標高は低い。
でも雪質が違う。
パウダーが膝まで来たとき、思わず声が出た。
人がいないから、新雪がずっと残っている。
東京から来たスキーヤーが狙うような斜面が、何本も手つかずのまま並んでいた。
リフト1日券は2,000円台。
コンビニ1軒もない村で、このゲレンデだけが静かに動いている。
午後2時を過ぎると、ほとんど貸し切りになる。
その時間帯に滑った1本が、今でも忘れられない。
木々の間から差し込む夕方の光。
自分のシュプールだけが残る斜面。
ああ、ここまで来てよかった。
音威子府の森と林道|人の気配が、完全に消える場所
スキー場から少し外れると、林道が続いている。
除雪されていない道。
足を踏み入れると、雪がひざ下まで沈んだ。
音がない。
本当に何も聞こえない。
風すら止まっている。
北海道の森に入ったことが何度かあるけれど、ここまで静かな場所は初めてだ。
気温はマイナス15度。
吐く息が白く固まって、すぐ消える。
木の枝に雪が積もって、重さでしなっている。
その形がおかしくて、なぜか笑ってしまった。
熊の出没情報があるエリアなので、冬でも鈴は必携だ。
それでも、この静寂を一度体験したら、また来たくなる。
都市の喧騒が、遠い別の星の話みたいに思えてくる。
歩いた距離は往復で約4km。
2時間もあれば十分だ。
音威子府駅|日本最北の、そばと静寂が残る駅
宗谷本線に乗って音威子府に着く。
列車は1日数本しかない。
駅舎は古くて、小さい。
でも中に入ると、独特の空気がある。
かつてここには有名な黒いそばがあった。
2021年に店主が亡くなり、今はもう食べられない。
そのことを知って、少し胸が痛くなった。
駅のホームに立つと、線路の先が真っすぐ雪原に消えている。
どこまでも白い。
列車を待つ人は誰もいない。
それでも、この駅は生きている。
地元の学生が数人乗り込んで、また静寂が戻る。
次の列車まで2時間あった。
ベンチに座って、ただ外を眺めた。
こんなにゆっくり時間が流れる駅は、他にない。
旭川から特急で約2時間。
その距離が、この静けさを守っている気がした。
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音威富士への行き方
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