標高1,ううつ岳。 地元の人でさえ「きつい」と言う山だ。 それでも冬に登りたくなるのは、 頂上から見える白い稜線が、頭から離れないから。 樹氷の森を抜けた先に、 誰も声を出せなくなる景色がある。
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鬱岳登山口|夜明け前、誰もいない雪の入口に立つ
登山口に着いたのは朝6時前だ。
気温マイナス14度。
息が白すぎて、前が見えない。
駐車場には先着の車が2台。
それだけだ。
装備を確認する。
アイゼン、ピッケル、予備の手袋。
忘れたら洒落にならない山だと、
前日に地元の山岳会のおじさんに念を押された。
登山口の標識は半分雪に埋まっている。
それがこの山の正直な顔だ。
スタートから30分、樹林帯に入る。
風が止む。
代わりに静寂が来る。
足音だけが聞こえる、あの感覚。
雪は締まっていて、歩きやすかった。
ただし、油断すると膝まで沈む箇所がある。
先行者のトレースを信じて進んだ。
樹氷帯|言葉を失う、白い森の中へ
標高900mを超えたあたりから、景色が変わった。
木という木が、白く凍っている。
樹氷だ。
ただ「きれい」という言葉では追いつかない。
枝の一本一本に、氷の結晶がついている。
朝の光を受けて、かすかに光っている。
カメラを出す手が震えた。
寒さのせいだけじゃない。
静かだ。
風もなく、鳥もいない。
自分の呼吸音だけが聞こえる。
樹氷帯は標高1,000mあたりまで続く。
歩いて約40分の区間だ。
その40分、ずっと無言で歩いた。
ガイドブックで何度も見た写真だ。
でも実際に立つと全然違う。
写真は平面だけど、ここは360度全部が白い。
正直、頂上よりここが一番よかっただ。
そう思いながら、足を止めた回数は5回を超えた。
鬱岳山頂|標高1,288m、北海道の冬がそこにある
頂上に着いたのは10時52分。
登山口から約4時間半かかった。
風が強かった。
体感温度でマイナス25度はあった。
顔が痛かった。
でも、目の前に広がっていたのは、
言葉にするのが難しい景色だ。
白い山々が、地平線まで続いている。
雲一つない。
増毛山地の稜線がくっきり見える。
遠くに日本海も光っている。
誰かが「うわ」と言った。
もう一人も黙って立っている。
その日、頂上にいたのは4人だ。
全員、しばらく動かない。
下山は2時間40分。
登山口に戻ったのは午後1時40分過ぎ。
足が笑っている。
でも、また来る。
次は2月の、もっと冷え込む日に。
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