人があまり来ない山、というのが正直な印象だ。 黒松内岳は標高740mほど。 低い。地味に見える。 でも冬に登ってみて、考えが変わった。 ブナの純林が雪をまとう景色は、どこか別の星のようだ。 ニセコでも羊蹄山でもない、この静けさを知っている人は少ない。
黒松内岳のおすすめスポット
黒松内岳登山口|静寂が始まる、雪の入口
登山口に着いたのは朝8時過ぎだ。
駐車スペースには車が2台だけ。
そういう山だ。
冬季は除雪されていない林道を歩くところから始まる。
スノーシューを持ってきて正解だ。
なければ膝まで埋まる。
気温はマイナス7度。
息が白い。
音がない。
風もない。
ただ雪を踏む音だけが続く。
登山口からの林道歩きは約2km。
それだけで30〜40分かかる。
体が温まってくるころ、ようやく本格的な登山道に入る。
焦らなくていい場所だ。
ここは競争する山じゃない。
雪の重さで曲がったブナの枝の下を、ただ歩く。
それだけで十分来た価値があった。
ブナ純林帯|北限のブナが、白く静まり返っている
黒松内は「ブナ北限の地」と呼ばれている。
その言葉の意味が、登りながらじわじわわかってくる。
標高400mあたりから、ブナの密度が上がる。
冬は葉がない。
枝だけの木が雪を受けて、白いオブジェみたいに並んでいる。
晴れていたので、木漏れ日が雪面に落ちている。
青白くて、きれいで、少し怖かった。
人の声がしない山というのは、こんな感じか。
ブナ林の中は風が遮られる。
体感温度が少し上がる。
そこだけ別の気候圏みたいだ。
写真を何枚撮っても、あの空気は写らない。
光の角度、雪の重さ、静けさ。
そういうものが重なって、ああいう場所になる。
冬にしか見られない景色があった。
夏に来たことがある人も、ぜひ冬に来てほしい。
黒松内岳山頂|740mの先に、ニセコ連山が並んでいた
山頂まで、登山口から約3時間かかった。
コースタイムより少し長い。
雪が深かったせいだ。
山頂は木が開けている。
突然、視界が広がる。
ニセコ連山が横一列に見える。
羊蹄山も見える。
あ、この山、すごいじゃないか。
そう思った。
標高740mとは思えない眺めだ。
周囲に高い山がないから、かえって遠くまで見渡せる。
晴れた冬の日だったのも大きかった。
山頂の気温はマイナス12度。
風が出てきている。
長居はできない。
行動食のチョコを食べて、5分で下山を始めた。
それでも十分だ。
あの景色は目に焼き付いている。
人が少ないこと、静かなこと、地味に見えること。
そのぜんぶが、この山の良さだ。
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黒松内岳への行き方
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