和歌山の、少し手前で降りる。 「御坊」という地名を、旅の前から何度も口に出する。 どこか懐かしい響き。 派手さはない。 でも着いた瞬間、空気が違うとわかった。 日高川が海へ注ぐ町。 千年以上の祈りが残る寺。 松林の向こうに広がる黒い砂浜。 ここには、時間の流れ方が違う場所がある。
御坊のおすすめスポット
日高川|川面が光る夕方、何もしないことが旅になる
橋の上から見下ろした。
川幅が広い。
ゆったりとした流れが、海へ向かっている。
日高川は全長118kmの一級河川。
御坊の市街地を抜けるあたりで、川の表情が変わる。
磯の匂いが混じりはじめる。
河口近くの土手に座って、30分ほど過ごした。
誰もいない。
鷺が1羽、石の上に止まったまま動かない。
カヌーで川を下る体験ができる施設も近くにある。
所要約2時間、料金は3,000円前後。
予約制なので事前に確認を。
夕方4時すぎ、西日が川面を染めた。
オレンジと金が混ざったような色。
スマホを構えたけど、しまった。
これは目で見るやつだ。
道成寺|あの鐘が、本当にあった
安珍と清姫の話は知っている。
教科書の隅で読んだ程度の、おぼろげな記憶。
でも実際に境内に入ると、空気が変わった。
創建は701年。
和歌山県最古の寺といわれている。
本堂への石段を上ると、重要文化財の仁王門が出迎える。
目当ては「縁起絵解き」の説明。
拝観料500円で、絵巻を使いながら僧侶が物語を語ってくれる。
1回約30分。
笑いも交えながら話すので、難しくない。
鐘楼の前で立ち止まった。
清姫が蛇になって安珍を追い、この鐘の中に隠れた男を焼き殺したという場所。
嘘みたいな話なのに、リアルに感じた。
境内は広くない。
でも見るべきものが密度高く詰まっている。
2時間あれば十分、でも3時間いても飽きない場所だ。
煙樹海岸|黒い砂浜と、波の音だけがある場所
白い砂浜を想像して来てはいけない。
ここの砂は、黒に近い灰色だ。
煙樹海岸は、全長約6kmのビーチ。
その名前の由来は、背後に広がる松林が霞んで煙のように見えることから。
実際に立つとわかる。
たしかに霞んでいた。
人がほとんどいない。
平日の午前中、数えて3人しか見当たらない。
波は荒い。
遊泳禁止のエリアが多く、海に入るには注意が必要。
でもそれがいい。
整備されすぎていない海には、野性がある。
松林の中に遊歩道が通っている。
サイクリングロードにもなっていて、レンタサイクルもある。
料金は1日500円ほど。
波の音を聞きながら、松の間を自転車で走った。
風が冷たかった。
ここには余計なものが何もない。
それだけで、来た意味があった。