山の奥に、こんな湯があったのか。 和歌山の山深い集落、龍神温泉へ向かったのは真冬のことだ。 高野山を越え、雪をかぶった杉並木を抜けると、急に小さな温泉街が現れる。 日本三美人の湯として名高いが、そんな言葉よりも、あの静けさの方が記憶に残っている。
龍神温泉のおすすめスポット
龍神温泉元湯|肌に触れた瞬間、湯の「本物」がわかった
建物は古い。
のれんをくぐると、番台のおじさんが顔を上げた。
料金は大人800円。
ロッカーも最低限。
ドライヤーは一台だけ。
そういう場所だ。
湯船は小さく、10人も入れば満員になる。
でも、そこに張ってある湯が、明らかに違った。
とろみがある。
なのに重くない。
肌に吸いついてくるような感触があった。
「美人の湯」という言葉の意味が、理屈じゃなく体でわかった瞬間だ。
湯温は42度前後。
熱すぎず、ゆっくり浸かれる。
冬の午前中、地元のおじいさんと二人で静かに浸かった30分は、旅の中でいちばん贅沢な時間だ。
上がった後も、肌がずっとしっとりしている。
これは本当の話だ。
護摩壇山|標高1372m、雪の山頂に誰もいない
冬の護摩壇山に登る人は少ない。
それがよかった。
龍神スカイラインを車で上り、「ごまさんスカイタワー」の駐車場に停める。
そこから山頂までは、片道約20分の遊歩道がある。
雪が積もっている。
道は踏み固められていたが、油断すると滑る。
軽アイゼンがあると安心だ。
山頂に着いた。
誰もいない。
木々に雪がついて、白と灰色の世界が広がっている。
音がない。
風の音だけが、ときどき木を揺らした。
標高1372m。
和歌山県の最高峰だ。
そんな場所が、こんなに静かでいいのか。
スカイタワーの展望台(料金300円)からは、晴れていれば四国まで見えると聞いた。
この日は雲が多く、見えない。
でも、それでよかった。
霧の中の山には、晴れた日にはない迫力があった。
高野龍神スカイライン|42kmを、ひとりで走る朝があった
全長42.7km。
高野山と龍神温泉を結ぶ山岳道路だ。
朝7時に走った。
他の車はほとんどいない。
道の両側に、杉と檜が続く。
霧がかかっている。
視界が開けると、山の稜線が重なって見える。
「こんな道が、ただの県道なのか」。
(正確には国道371号。でも、そのスケールは国道を超えている。)
冬は路面凍結が怖い。
前日の夜に雪が降ったらしく、日陰の部分はアイスバーンになっている。
スタッドレスタイヤは必須だ。
ノーマルタイヤで来ていたら、途中で引き返すことになっている。
でも、その怖さも込みで、この道はいい。
スカイラインを抜けて、高野山の門前町に出たとき、なんとなく達成感があった。
温泉と山と、長い道。
それだけで旅として完成している。
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龍神温泉への行き方
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