新幹線を降りた瞬間、空気がちがう。 広島市内とは明らかに異なる、静けさと湿度がある。 東広島は、日本三大酒どころのひとつ。 「西条」という地名は、日本酒好きなら一度は耳にしたはず。 その蔵が、駅から歩いて10分以内に集まっている。 観光地化されすぎず、でも放置もされていない。 そのバランスが、ちょうどよかった。
東広島のおすすめスポット
西条酒蔵通り|煉瓦の煙突が、空に刺さっている
赤煉瓦の煙突が、何本も空に立っている。
それだけで、ここが特別な場所だとわかる。
西条駅から歩いて5分ほど。
酒蔵通りに入った瞬間、時代がずれた感覚がした。
観光客は確かにいる。
でも、酒造りの匂いもちゃんとある。
麹の甘さと、水の冷たさが混ざったような香り。
あれは体験した人にしかわからない。
通りの長さは約1km。
ゆっくり歩いて20〜30分ほど。
各蔵の外観は無料で見られる。
試飲付きの見学は蔵ごとに異なるが、500円前後が多い。
平日の午前中が一番静かでよかった。
土日の昼は混む。
それだけは覚えておいたほうがいい。
賀茂鶴酒造|百年以上の歴史が、瓶の中にある
賀茂鶴は、西条を代表する蔵のひとつ。
創業は1904年。
120年分の時間が、この建物に積み重なっている。
見学コースは無料で参加できる。
所要時間は約40分。
予約不要で入れるのが、旅人にはありがたい。
仕込み水が湧き出る場所も見せてもらえた。
西条の酒がうまい理由は、この水にある。
軟水と硬水のちょうど中間。
そう説明されたとき、なるほど。
見学後の試飲は2〜3種類。
辛口が好きな人には大吟醸がおすすめ。
購入は蔵元直売所で。
720mlで1,500円〜2,000円台のものが多い。
帰りに一本買って、新幹線で飲んだ。
それが今回の旅で、一番うまい酒だ。
白市の酒蔵|人がいない。静寂の中に、本物がある
西条から車で20分ほど走ると、白市がある。
ここを知っている人は、まだ少ない。
白市は、かつて西国街道の宿場町だ。
江戸時代の町並みが、手つかずのまま残っている。
そこに酒蔵がある。
観光客はほとんどいない。
白市駅から歩いて5分。
突然、時代が変わる。
格子の家、土壁、石畳。
そこに、低い煙突がひとつ。
蔵の前で立ち止まって、しばらく動けない。
観光地でもなく、廃れてもいない。
ただ、そこにある。
その存在感が、他の場所と全然ちがった。
西条の酒蔵通りも好きだ。
でも白市は、もっと個人的な発見だ。
誰かに教えたいような、教えたくないような。
そういう場所に出会えることが、旅の醍醐味だ。