兵庫の北、但馬の小京都と呼ばれる出石。 でも「小京都」という言葉は少し違う気がした。 もっと素朴で、もっと静かで、もっとリアルな城下町だ。 そばの香りと、石畳の冷たさと、時計台の鐘の音。 それだけで、もう十分だと思えてしまう場所だ。
出石のおすすめスポット
出石城跡|108段を登ると、城下町が全部見える
石段の数を数えながら登った。
途中で何度か振り返る。
そのたびに、辰鼓楼が小さくなっていく。
本丸跡に立つと、出石の町がぐるりと広がった。
山に囲まれた盆地に、格子状の街並み。
江戸時代からほとんど変わっていないという話も、ここからなら信じられる。
天守はもうない。
残っているのは石垣と隅櫓だけだ。
でもそれがかえって良かった。
修復されすぎていない、生の城跡の空気がある。
登り口近くに有子山稲荷神社がある。
朱色の鳥居が連なっていて、伏見稲荷を思い出した。
ただ、人は全然いない。
静かすぎて、少し怖いくらいだ。
入場無料なのも驚いた。
これだけの景色が、タダで見られる。
辰鼓楼|1時間ごとに鳴る鐘が、旅のテンポを作ってくれた
出石に着いてまず目に入るのが、辰鼓楼だ。
高さ約13メートルの時計台。
1871年に建てられた、日本最古級の時計台のひとつだという。
最初は「ああ、時計台ね」くらいにしか思わない。
でも町を歩いていると、1時間ごとに鐘が鳴る。
その音が、思ったより大きくて、思ったより澄んでいた。
そばを食べているときも、城跡を登っているときも、鐘が鳴った。
なんとなく、その音に合わせて動いている。
旅の時間軸を、辰鼓楼が決めてくれる感覚だ。
台座の部分は往時の石垣がそのまま使われている。
近くに寄って見ると、石の積み方が荒々しくて良い。
観光地然としていない、本物の古さがある。
夜にライトアップされた辰鼓楼も見た。
昼間とは全然違う顔だ。
人が誰もいなくて、独り占めだ。
永楽館|明治の芝居小屋に、時間ごと閉じ込められる
出石に芝居小屋があると聞いて、正直なめている。
でも永楽館の扉を開けた瞬間、空気が変わった。
1901年築、近畿最古の芝居小屋だ。
長年閉鎖されていたものを、2008年に復活させた。
木の匂い、桟敷席の低さ、舞台との距離の近さ。
すべてが今の劇場とは違う。
舞台と客席の間が、2〜3メートルしかない。
役者の息遣いまで届きそうな距離だ。
演目がない日でも、見学だけできる。
料金は500円だ。
回り舞台や花道も残っていて、実際に動かしてもらえた。
ガイドのおじさんが丁寧に教えてくれた。
観光ガイドというより、この建物が好きで仕方ない人の話し方だ。
10月には歌舞伎公演もある。
その時期に合わせてもう一度来たいと、帰り道に思った。
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出石への行き方
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