新幹線を降りると、空がやけに広い。 山と海が近くて、街の密度が低くて、息がしやすい。 上越は、誰かに教えたくないまま来るような場所だ。 歴史の重さと、桜と、港の風が、 ぜんぶ同じ場所に詰まっている。
春日山城跡の石段を登ると、上越の戦国時代が立ち上がる。上杉謙信が支配した城の跡は、桜の時季には特に幽玄だ。城下の高田城址公園では、濠を染める桜並木が、江戸時代の城郭の記憶を浮かばせる。直江津港で海風を吸い込むと、ここが日本海の要衝だったことが、肌で理解できる。謙信の時代も、高田藩の時代も、港の塩辛い匂いは変わらなかったはずだ。越後の土地に根を張る歴史は、春の光の中で、より深く見えてくる。そんな街である。
上越のおすすめスポット
春日山城跡|謙信がいた山に、今も風が吹いている
登り始めて、すぐ後悔した。
なかなかの坂だ。
舗装はされているが、息が上がる。
20分ほど歩いたところで、視界が開けた。
眼下に広がる上越の街。
遠く日本海も見える。
ここに城があって、謙信がここから采配を振るっている。
そう思うと、風の冷たさがちがって感じた。
本丸跡には謙信の銅像が立っている。
思っていたより、小ぶりだ。
でも、台座の上から眺めるあの視線の先には、
確かに何かが見えているような気がした。
春は桜が咲く。
歴史好きじゃなくても、来てよかったと思える山だ。
駐車場から本丸まで、徒歩で片道25〜30分ほど。
動きやすい靴は必須。
スニーカーで行ったことを、途中で少し後悔した。
高田城址公園|3000本の桜が、夜に化ける
昼間も十分きれいだ。
でも、日が暮れてから戻ったのが正解だ。
日本三大夜桜のひとつ。
そう聞いていても、実物を見ると言葉が出ない。
ぼんぼりの灯りに浮かぶ桜は、昼間とまるで別物だ。
ピンクじゃなくて、白に近い。
水堀に映る光が、揺れる。
ただそれを見ながら、しばらく動けない。
桜の見頃は例年4月上旬ごろ。
期間中は夜間ライトアップがある。
屋台も出るが、混雑する日は駐車場が早々に埋まる。
電車かバスで来るほうがいい。
日中は三重櫓の周りをぐるっと歩くだけでも1時間かかった。
外堀、内堀、芝生広場。
とにかく広い。
弁当を持ってきたほうがいい、本当に。
直江津港|海風と、どこかに向かう船の音
港に着いたのは、夕方の4時ごろだ。
佐渡に向かうフェリーが、ちょうど出るところだ。
汽笛が鳴った。
なんでもない音なのに、少し胸が騒いだ。
直江津港は観光地というより、生活の港だ。
きれいに整備された「映える」場所ではない。
でも、それがいい。
海をただ眺めている。
春の日本海は、思ったより穏やかだ。
トンビが何羽か、のんびり旋回している。
近くに「道の駅 うみてらす名立」がある。
車で10分ほど。
地元の魚介が並ぶ売店と、日帰り温泉がある。
港で冷えた体を温めるのに、ちょうどよかった。
夕陽の時間に来ることをすすめたい。
雲が多くても、海に光が落ちる瞬間があった。
その5分間だけで、来た甲斐があった。
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