雪がちらつく夜、露天風呂に肩まで沈んだ。 湯気の向こうに山の稜線が見える。 加賀温泉郷は、そういう場所だ。 派手さはない。 でも、一度来ると、また冬になると思い出す。 石川県の南端、三つの温泉地がそれぞれ違う顔を持っている。 山の湯、渓谷の湯、湖畔の湯。 全部まとめてまわれる距離にある。
加賀温泉郷のおすすめスポット
山代温泉|古総湯に入った夜、明治時代に戻った気がした
山代温泉の中心に、石造りの建物が静かに立っている。
「古総湯」だ。
再建されたのは2009年。
でも内装は明治時代の様式をそのまま再現している。
ステンドグラスの窓、檜の浴槽、タイル張りの床。
シャンプーも桶もない。
かけ湯して、ただ浸かるだけ。
それが逆に良かった。
料金は460円。
朝6時から開いている。
早朝に入ると、地元の人しかいない。
おじさんが無言で湯に浸かっている。
観光地なのに、観光地じゃない時間がある。
温泉街の路地も歩いてみた。
総湯を中心に旅館や和菓子屋が並んでいる。
九谷焼の絵付け体験ができる店もあった。
冬の夕方、湯気がそこら中から立ち上って、
なんとなく全部が夢みたいだ。
山中温泉|鶴仙渓の雪景色は、静かすぎて怖いくらいだ
山中温泉に来たのは、川沿いの遊歩道を歩くためだ。
「鶴仙渓」という渓谷だ。
全長1.3キロ。
ゆっくり歩いて30分ほど。
冬の朝9時、雪が積もっている。
足跡はほとんどない。
川の音だけが聞こえる。
木の枝に雪が乗っかって、たまに落ちる。
それだけのことなのに、目が離せない。
コース中ほどにある「あやとり橋」が面白い。
S字形にうねった橋で、デザインしたのは彫刻家の流政之。
橋の上から渓谷を見下ろすと、足がすくんだ。
歩き終えたら、すぐ近くの「総湯 菊の湯」へ。
男女で建物が分かれている珍しい造り。
料金は460円。
山中漆器の展示も中にあって、湯上がりにぼんやり眺めた。
芭蕉も「奥の細道」で立ち寄った温泉地だ。
それが妙に腑に落ちる静けさがある。
片山津温泉|柴山潟を見ながら入る露天風呂、これが全部だ
片山津温泉に着いたのは夕方だ。
湖畔に宿が並んでいる。
総湯に入ってみた。
設計は谷口吉生。
ガラス張りのモダンな建物で、
湖に張り出すように建っている。
露天風呂から柴山潟が見える。
冬は湖面がざわつく。
対岸の白山連峰に雪がかかっている。
夕日が落ちると、空と湖が同じ色になった。
そのまま30分、動けない。
料金は540円(大人)。
朝7時から開いている。
地元の人も普通に来るので、観光客だけじゃない空気がある。
温泉街は山代・山中より小ぢんまりしている。
でも湖沿いに散歩できる遊歩道があって、
夜に歩くと旅館の灯りが湖に映っている。
飾らない温泉地だな。
だから逆にゆっくりできる。
三つの中で一番「また来たい」と思ったのは、ここだ。
モデルコース
加賀温泉郷への行き方
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