地平線まで牧草地が続いている。 橋はもう湖の底に沈んでいる。 温泉街には人が少なく、静かだ。 上士幌は、北海道の中でもとくに「遠い」場所にある。 その遠さが、全部正解だ。 帯広から車で約1時間。 たどり着いた先に、これほどの密度があるとは思っていない。
上士幌のおすすめスポット
ナイタイ高原牧場|標高800m、風の中に牛と空だけがある
「日本一広い公共牧場」という言葉は知っている。
でも着いてみると、スケール感が想像を超えている。
山頂に向かう道を車で登ると、左右に牛の群れ。
フェンスの向こうに、ただ草原が広がっている。
空が広すぎて、少し怖いくらいだ。
頂上のテラスハウスには9時から15時まで営業している売店がある。
ソフトクリームは400円。
濃くて、甘すぎない。
風が強くて、食べながら手が冷えた。
牧場への入場は無料。
ただし道は舗装されていても細い。
対向車が来たときの離合に少し緊張した。
雲が動くのが見える。
影が草原をゆっくり渡っていった。
それだけで、30分は立っていられた。
タウシュベツ川橋梁|年に数ヶ月だけ、橋が水面に現れる
ダムの水位が下がると、橋が姿を見せる。
冬から春にかけての話だ。
湖岸へのゲートは施錠されている。
鍵は上士幌町観光協会で借りる仕組みで、貸し出しは1回500円。
9時から17時までの時間制限つきだ。
ゲートから橋まで、未舗装の林道を歩いて20分ほど。
熊の生息地でもある。
ひとりで来なければよかったと少し後悔した。
でも、たどり着いた。
アーチが10連続で並んでいる。
コンクリートが崩れ始めていて、草が生えている。
1937年に作られた橋が、まだここにある。
湖の水に半分映っている。
何も言葉が出ない。
写真を撮りながら、手が震えている。
寒かったからだ。
感動したからだ。
両方だ。
糠平温泉|山の奥の小さな温泉街で、全部手放した夜
糠平温泉は、ホテルが数軒並ぶだけの小さな温泉地だ。
コンビニはない。
夜は本当に暗い。
宿に着いたのは17時過ぎだ。
チェックインして、すぐ温泉に向かった。
お湯は無色透明で、柔らかい。
体がじわじわとほぐれていく感じがした。
肩こりを持ち込んでいたのに、翌朝には忘れている。
宿の夕食に十勝牛が出た。
量が多かった。
北海道の飯の量に、毎回驚かされる。
夜、外に出た。
星が出ている。
街灯がないから、目が慣れると本当に多く見える。
寒くて5分で戻ったけれど、
あの5分は覚えている。
翌朝の朝風呂は誰もいない。
静かな湯船に、窓から光が入ってきた。
それだけで旅が完成した気がした。