東海道五十三次の宿場町として栄えた草津。 琵琶湖のほとりに、歴史と自然が静かに共存している。 新幹線で京都から30分もかからないのに、 ここには観光地の喧騒がない。 歩くたびに、時代がずれていく感覚があった。
滋賀県草津市は、東海道と中山道が合流した宿場町だ。大阪から約25分。草津駅を降りると、史跡や公園が徒歩・自転車圏にまとまっている。草津宿本陣は全国でも規模が別格とされ、江戸時代の本陣建築にそのまま入れる貴重な史跡だ。草津川跡地公園では、川底が周囲より高い天井川だった地形を歩いて体感でき、街道がトンネルで川をくぐった珍しい構造を確かめられる。烏丸半島水生植物公園では6月下旬に大賀蓮が一斉に開き、琵琶湖に面した水面に淡紅色の巨大な花弁が並ぶ。宿場の記憶と湖辺の自然、二つの顔を持つ町。
草津のおすすめスポット
草津宿本陣|将軍も泊まった宿に、ひとりで立ち尽くした
入館料200円。
それだけ払えば、江戸時代の本陣に入れる。
全国に残る本陣の中でも、ここは規模が別格だ。
建物面積は約2800平方メートル。
畳の廊下が延々と続く。
奥の「上段の間」に踏み込んだとき、空気が変わった。
将軍専用の部屋だ。
床の間、違い棚、天袋。
すべてが格式ばっている。
でも不思議と威圧感はない。
光の入り方が柔らかいせいだ。
平日の午前中に行ったら、ほぼ貸し切り状態だ。
係の方が丁寧に説明してくれて、30分以上話し込んだ。
ここは「見る」場所というより「感じる」場所だ。
徳川家の参勤交代の喧騒を、静けさの中で想像する。
そういう時間の使い方が、草津宿本陣に合っている。
烏丸半島水生植物公園|6月の琵琶湖は、ハスの海になる
6月下旬から8月にかけて、ここは別の惑星になる。
琵琶湖に突き出した烏丸半島の先端に、
広さ約13ヘクタールの植物公園がある。
入園料は大人270円。
ゲートを抜けた瞬間、視界がピンクに染まった。
大賀ハスをはじめ、世界中のハスが一斉に咲いている。
花びらが大きい。
顔くらいある。
早朝に行くのがいい。
9時前なら人も少なく、ハスも開いたばかりだ。
水面をゆっくり眺めていると、
カエルが葉の上で日向ぼっこしている。
湖岸に出ると、琵琶湖が広がる。
対岸の山並みがうっすら見える。
海と間違えそうになる広さだ。
冬に来てもいい。
枯れたハスの茎が水面に立ち並ぶ景色は、
むしろ凛としていて美しかった。
季節で顔が変わる場所だ。
草津川跡地公園|廃川跡が、街を横切る緑の回廊になった
これは、なかなか体験できない地形だ。
草津川はかつて「天井川」として知られている。
川底が周囲より高く、街道はトンネルで川の下をくぐっている。
その川が2002年に役目を終え、今は公園になっている。
全長8キロメートル。
街を横断する細長い緑地帯だ。
歩いてみると、独特の感覚がある。
両側に土手があって、街の音が遠くなる。
住宅街の真ん中に、突然ひらけた草原が現れる感じ。
地元の人の日常に溶け込んでいる。
犬の散歩、ランニング、子どもの自転車練習。
観光客はほとんどいない。
旧草津川のトンネル部分は今も残っていて、
近くに立つと、かつての暮らしが想像できる。
川が街の上を流れていた、という事実がリアルになる。
入場無料。
地図なしで歩き始めて、迷いながら探すのが楽しかった。
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