島根の西の端、三隅という地名を地図で探すところから旅は始まった。 観光客が群れるわけでもない。 インスタで溢れているわけでもない。 それでも、行った人だけが「また行きたい」と言う場所がある。 日本海の荒波と、山の静けさが、ここでは同じ距離にある。
三隅のおすすめスポット
清水寺庭園|苔と石が、何百年も同じ顔をしている
国道から細い道を入って、10分近く歩いた先にある。
車を停める場所に迷って、少し引き返した。
それくらい、ひっそりとしている。
入山料は300円。
受付のお婆さんが「ゆっくり見てって」と言ってくれた。
庭に入ると、音が変わる。
風の音と、自分の足音だけになる。
室町時代からあるという庭。
でも「歴史的」という言葉が似合わない気がした。
時間が止まっているというより、時間ごと飲み込んでいる感じ。
苔がびっしり張った石組みの前で、気づいたら10分立っている。
誰もいない。
それが贅沢だ。
紅葉の時期は11月上旬〜中旬が見頃。
朝9時頃に来ると、光が庭の奥まで差し込んでくる。
三隅大平桜|一本の木に、圧倒された
「大平桜」という名前を初めて聞いたとき、正直ピンとこない。
桜なんて、どこにでもある。
山の斜面を登り切って、視界が開いた瞬間。
あ、これは違う。
樹齢600年以上。
幹回りが約7メートル。
一本の木が、小さな丘を覆い尽くすように咲いている。
満開の時期は4月上旬〜中旬。
見頃は1〜2週間しかない。
その短さが、この桜をよりすごくしている気がした。
夕方に行った。
光が斜めに差して、花びらがオレンジに染まっている。
写真に収めたけど、あの空気は写らない。
駐車場から徒歩15分ほど。
軽い山道があるので、歩きやすい靴で行くこと。
混雑するのは週末の10時〜14時頃。
平日の朝が、いちばん静かでいい。
日本海の夕日|18時17分、海が燃えた
三隅の海岸線に出たのは、日没の1時間前だ。
砂浜はほとんど人がいない。
サーファーが一人、遠くにいた。
波の音が大きかった。
日本海の夕日は、太平洋とは違う。
空が広い。
遮るものが何もない。
地平線まで全部、自分のものみたいな気持ちになる。
スマホの天気アプリで、その日の日没時刻を確認している。
18時17分。
太陽が水平線に触れた瞬間、海が赤くなった。
赤というより、燃えているみたいだ。
5分で全部終わった。
そのあと、急速に暗くなった。
撮った写真は50枚くらいある。
でも、見返すのはいつも最後の1枚だけ。
水平線ギリギリで、太陽が半分だけ残っている写真。
冬は波が高くなる。
その分、夕日の色が濃い。